昨年のアワードの席で松山晋也は不敵に笑った。「うれしいですけど1回で終わらないように。タイトルを何度も獲れるように。そこを追い求めていけるようにしたい」。
昨季は59試合に投げ、43ホールドポイントで初タイトルに輝いた。スポットライトを一身に浴びた華やかな舞台で、すでに視線は先に向かっていた。
「ライデルがいてもいなくても、抑えを目指したい」。すでに去就が注目されていた絶対的守護神
ライデル・マルティネスへの宣戦布告を秘かに狙っていた。その後、マルティネスは
巨人移籍が決まり、抑えは空白となった。
「自分が抑えになるつもりでやるだけです」。昨季勝ちパターンをともに務めた
清水達也を含め、新入団のマルテとライバルは少なくない。しかし、強い覚悟を胸に掲げているのが最多セーブのタイトルだ。
自主トレでは軽トラックを引っ張るなど、松山らしいぶっ飛んだトレーニングで全身を強化した。キャンプでは上半身の張りのため中盤はキャッチボールを控える期間もあったが、その後、順調に回復しあっという間にいつもの強いボールを投げ込むようになった。
「投げられなくてイライラして口内炎もできましたけど、これで治ると良いですね。投げられるというのは幸せなことですね」と笑顔を見せた。
「もう一度、人生を変えられるように頑張りたい」。育成入団から2シーズンで世界は一変した。人はこれを成功と呼ぶかもしれない。しかし松山にとってはあくまでも通過点だ。
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