もみくちゃにされながらウォーターシャワーを浴び、最後は
新井貴浩監督にきつく抱き締められた。
「いや〜もう本当にヤバイです」
4月5日の
DeNA戦(マツダ広島)の延長11回先頭の代打でサヨナラ本塁打。9回に4点差を追い上げられた最悪の展開だった。田村俊介は、待望のプロ1号で最高のピリオドを打った。
DeNA・
山崎康晃の真ん中高め直球をフルスイングした。「あの場面で打てたというのは、これからの自分にも強みとしてつなげていけるかなと思う」と、手元にも胸の中にも確かな手応えが残った。
「真っすぐ一本で、真っすぐが来たら初球からいこうと思っていた。『こういう軌道かな』と描いた通りに来た」
プロ1号が代打サヨナラ本塁打となったのは球団史上初めてだった。
ヒーローインタビューでは「お待たせしました!」と、満面の笑みを浮かべた。
昨春には当時プロ8安打というキャリアで侍ジャパンに抜てきされながら、シーズンは37試合で打率.198に終わった。
「期待していただいて、なかなか打てなかった」
4年目、通算140打席目でやっと心の底から笑えた。
プロ1号の翌日には、四番に座って1安打。その後は一番を任される試合も続いた。
だが、反省が残る打席もある。一番で起用された4月27日のDeNA戦(横浜)、1点を追う8回一死三塁の絶好の同点機で見逃し、ファウル、空振りと、
バウアーのナックルカーブになすすべなく3球三振。絶対にバットに当てないといけない場面。新井監督は「いい経験にしてもらいたい」と求めた。
5月11日のDeNA戦(横浜)では1安打を放つも、翌12日には登録抹消が発表された。入れ替わりで故障離脱中だった
秋山翔吾、モンテロが一軍復帰。ポジション争いはシーズン中も激しさを増す。
すべてのプレーを今後の糧に、飛躍をつかみ取る。
写真=井沢雄一郎