どんなプレーが飛び出すか、そこに打球が飛ぶたびに観客は注目の視線を注ぐ。そして、矢野雅哉はその期待にしっかり応える。
その守備だけでオールスターに選ばれる資格は十分。7月1日にセ・リーグ遊撃手部門1位での選出が決まると、「一度は出たいという思いがあったのでうれしい」と喜びを口にした。
6月15日の
日本ハムとの交流戦(エスコンF)の9回の守備で打球を素手でつかむと、三遊間の深いところからノーバウンドで一塁送球。球場を二分するほど真っ赤に染めたファンだけでなく、球場全体がどよめいた。
昨年初めてゴールデン・グラブ賞に選ばれたように、これまでにも数え切れないほどスタンドを沸かせてきたとはいえ、改めて異次元の守備力を見せつけるスーパープレーだった。
ただ、課題の打撃面でアピールに苦しんだ。
昨季はチームの「守り勝つ」というスタイルにも合致して、開幕スタメン外から正遊撃手へと上り詰めた。9月以降は打率.314とシーズン終盤に右肩上がりの好成績で存在感を発揮した。
今季、開幕当初はずっと二番を任されながら、打率2割超えがやっとという今は、下位打線が定位置という状況。
「打撃で結果を残せれば、もっとたくさんの人から選んでもらえると思う」と、球宴の舞台も目標に奮起した。
今季は、開幕前の3月に侍ジャパンの強化試合メンバーに選出され、野球人生で初めて日の丸を背負った。
初選出のオールスター。昨年は、投票用紙に名前はなくファン投票は圏外。ただ、選手間投票で
ヤクルト・
長岡秀樹に38票差の2位に入った。
念願のスターの仲間入りを果たし、「ファンの方々が期待している守備をしっかりアピールできるように、良いプレーができるように頑張りたい」と意気込む。
プロ5年目に立つ夢の舞台で、プロ野球ファンの目をクギ付けにしてみせる。
写真=宮原和也