チームがもがき苦しむ中にいて、小園海斗は安打を積み重ねる。
7月27日の
巨人戦(マツダ広島)。0対5の5回に先頭から4連打で3点を奪い、なおも無死三塁から1点差に迫る中前適時打。2年連続4度目の大台100安打に乗せ、7回一死の打席で左前打。この試合を終えて打率.292でリーグトップに躍り出た。
この日の試合前には、新井監督から「チームの状態は悪いけど、しっかりと引っ張っていってくれよ」と言葉を掛けられた。
「そういう立場だと思っていますし、やらないといけない。期待してもらっている。結果で返せるように」。7年目の25歳が背負うものは大きい。
8月8日の
中日戦(バンテリン)では、試合前ノック時に左内転筋の張りが出てスタメンを外れたが、幸い軽症で、12日の
阪神戦(マツダ広島)でスタメン復帰し、2安打1打点で勝利に貢献。
17日の
ヤクルト戦(マツダ広島)は3安打を放ち、同日を終えて打率.295、リーグトップと勢いを保つ。
7年前の2018年、報徳学園高の中心選手として中日・
根尾昂、
ロッテ・
藤原恭大(ともに大阪桐蔭高)と“高校ビッグ3”と呼ばれ、甲子園を沸かせた。3年夏の2回戦・聖光学院高戦では、大会タイ記録の1試合3二塁打。同年秋のドラフト会議で根尾と並ぶ最多4球団競合の末に広島入り。
昨年は自身たち以来6年ぶりに夏切符をつかんだ母校は、この夏、兵庫大会決勝で涙をのんだ。2年連続の出場は逃したものの、熱い記憶がよみがえる真夏のここから、自身にとっても正念場と言える戦いが待ち受けている。
堂々の首位打者争いを繰り広げ、得点圏打率は12球団で唯一の4割超え。それでいて物足りなさが残るのは、チームが低迷しているから。
「負けているのも事実。出ている人の責任は大きい」
まだシーズンは1カ月半ある。一つでも上の順位へ、背番号5がチームを引っ張っていく。
写真=井沢雄一郎