林琢真にはヒーローになる資格があった。「今日が最後の試合だ……という気持ちで毎日、グラウンドに立っているので」。絶対的なレギュラーではない立場で、5月9日の
広島戦(横浜)も途中出場。覚悟と集中力だけは人一倍だった。3対3と同点の延長10回無死二塁。直前に
柴田竜拓がバントを失敗していた。
「いつも柴田さんには助けられている。柴田さんのミスをカバーしようという気持ちで、必死でした」。自身より7学年上。31歳の先輩も守備走塁や小技で安定した働きが求められ、高い水準で応えてきた一人だ。一死二塁から恩返しを誓い、左中間へサヨナラ二塁打を飛ばした。10回二死二塁のピンチではカメラマン席に飛び込みながら、三邪飛を好捕。「必死だったので、受け身を取って……」と気迫でアウトにした。
駒大から2023年ドラフト3位で入団。174cm74kgは決して恵まれた体格ではなく「攻守走すべてにおいて、スピード感を全面に出したい」とアピールポイントをはっきりさせた。プロ1年目から65、63試合と出番をつかみ、今季も開幕一軍入り。代走、守備固めから存在感を発揮してきた。内野では一塁を除く全ポジションに対応。課題の打撃でも力をつけている。
チームは
牧秀悟が左手親指の手術で離脱しており、主将の定位置だった二塁を任されているのが林だ。「試合に出たときは『やることがない』というぐらい準備をしています」。日々全力のガッツマン。自分にしか出せない「色」で挑む。だ。
写真=BBM