ベンチの最前列で、森下暢仁は両手を空に掲げて歓喜した。
8月16日の
ヤクルト戦(マツダ広島)。降板が決まった6回一死からモンテロが勝ち越しソロ。6月13日の
日本ハム戦(エスコンF)以来、64日ぶりの6勝目をもたらす一発だった。
6回7安打3四死球で2失点と、決して満足のいく投球ではなかったが「久しぶりにうれしいなと思いました」と心の底から湧き出た笑顔がはじけた。
約2カ月間は白星がなかっただけでなく、8戦で8敗を喫した。7月4日の
巨人戦(東京ドーム)は8回1失点で完投負け。報われない登板もあったが「自分がゼロで抑えていれば勝ち星は増える。それができている投手が勝って、タイトル争いをしている」と言い訳はしなかった。
球宴期間中に末包、大盛らと食事に出掛け、それぞれが思いの丈をぶつけた。
「野球をやっていても面白くないというか。負けているからではなく、なるべくしてなっているんじゃないか」
後半戦の開幕前日の練習前、自身らが“発起人”となって選手ミーティングを実施。自身の不本意な成績が直結するように、チームは7月に4勝(16敗3分け)しかできなかった。リーグ優勝はかすんでしまったが、CSを見据えた残り試合に向けて選手全員で戦う姿勢を確かめ合った。
8月23日の
中日戦(マツダ広島)は7回3失点で14敗目を喫し、翌24日には右肩の張りのため登録抹消となった。復帰を目指し、リハビリに取り組んでいる。
チームが一つでも上の順位に行くため、開幕投手を務めたエースの自覚を胸に、一つでも多くの白星を積み上げていく。
写真=井沢雄一郎