復調の足掛かりとなるような放物線だった。8月13日の
ヤクルト戦(神宮)。3対2の6回二死一、二塁で代打を告げられた筒香嘉智は、沈むチェンジアップをすくい上げて右翼席へ7号3ランを運んだ。日本球界では初の代打弾で10対2の大勝に貢献。「打った瞬間に行くと思った。速い球に(タイミングを)合わせる中で変化球に対応できた」と納得顔で振り返った。
思うように成績を伸ばせず、7月7日に出場選手登録を外れると、酷暑の中でバットを振り込んだ。若手に負けじと貪欲に汗にまみれた33歳は「(がむしゃらさは)僕の方があったんじゃないか」と胸を張る。イースタン・リーグ9試合で打率.321、1本塁打と状態を上げ、8月7日から戦列に戻った。
チームは7月に9勝11敗2分けと苦しんだ。8月初めには主将で主砲でもある
牧秀悟が左手親指付け根を痛めて離脱。間もなく手術を受け、長期離脱の可能性が膨らんだ。終盤戦での巻き返しを期す筒香は「ベイスターズの力はこんなもんじゃない。選手はもっともっといいパフォーマンスができると思う。それを残り試合で全員が出せたときに、いい結果になる」と言葉に力を込める。
三浦大輔監督が「ファンの雰囲気が変わる。大きな存在」と口にする通り、その一振りには流れを変える力がある。「代打だろうが、スタメンだろうが、多くの変わりはない。残り試合が少ない中、その日、その日が非常に大事。一つでも貢献できるように頑張る」と筒香。チームを勢いづける一打を放つ覚悟だ。
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