集中力を研ぎ澄ませて仕留めた一打だった。
8月22日の
中日戦(マツダ広島)で3点差をひっくり返された直後の8回二死二、三塁。小園海斗は、2球で追い込まれたが、粘って6球目を痛烈に中前にはじき返した。試合は延長戦の末に敗れはしたが、一時同点に追い付き、意地は見せた。
8月に入り、安定した打撃にさらに磨きがかかってきた。結果を残しても「今日はもう終わり。また明日から」と一戦一戦、目の前の1打席だけに目を向ける。
8月は下半身の張りなどでベンチスタートの試合はあったが、執念の一打を放った中日戦までスタメン15試合で9度のマルチ安打をマークした。
5月1日の打率.305をピークに、5月は月間打率1割台と苦しんだものの、その後は右肩上がり。その後も3割に到達したことはないとはいえ、2割9分台前後を保つ。
2リーグ制後としては史上初の2割台の首位打者の可能性も話題に上がる中で、
阪神・
中野拓夢らとの首位打者争いを先頭で引っ張っている。
昨秋のプレミア12で二塁手としてベストナインに選ばれたことなどはあるが、7年目のここまでのシーズンで主要タイトルとは無縁だった。
自身、開幕前から「あまり狙いにいくことはしたくない」と無欲の姿勢を貫いてきた。
「最終的に獲れればいいけど、しっかり試合に出てタイトルに絡めるぐらいの活躍をしたいという思いだけ」
8月末に5連勝もチームの苦しい戦いは続き、9月5〜7日の阪神戦(甲子園)はカード全敗。昨年の
巨人に続き2年連続で、目の前で胴上げを許す屈辱も味わった。
9月10日時点で、4位中日と1.5ゲーム差の5位。2年ぶりのCS進出に向けて一進一退の攻防が続く。
この正念場で、背番号5のバットが希望の道を切り開いていく。
写真=井沢雄一郎