悔しさを押し殺し、東克樹は言葉をつないだ。「まあ、仕方ないんで……。僕から言えることは何もないです」。9月3日の
広島戦(マツダ広島)は8回を2失点。「ここ数試合の中で一番いい投球だった」と手応えも感じていた。しかし、1点をもらった直後の5回一死二、三塁で、遊撃の
京田陽太が2個目の失策。代打・
前川誠太の打球を後逸し、同点、勝ち越しと走者2人の生還を許した。リーグ単独トップの13勝目を逃し、自責0で8敗目。エースにとって酷な結末が待っていた。
交流戦明けから
阪神の独走を許し、98年以来の優勝は成し遂げられなかった。先発投手は原則として週に1度の出番。「1つでも負けると順位が変わる。全然、あり得ること。1試合1試合、丁寧にチームの勝利のために投げたい」と自身に言い聞かせてきた。大きな離脱もなく、すでに3年連続の2ケタ勝利はクリア。8月は4試合で2勝2敗、防御率4.70と苦しんだが、年間を通して5回を持たなかったことは1度もない。
9月22日までに23試合に登板し、クオリティースタート(QS・先発で6回以上を投げ自責3以内)は18回。ケイと並び、チーム最多の数字だ。現実的に目指せるタイトルは23年以来、自身2度目の最多勝。「負けていい試合、気を抜いていい試合なんていうものはない」とあくまでもチームの勝利が優先だ。「1個のアウトを丁寧に取っていく」と積み重ね、2位でクライマックスシリーズの横浜スタジアム開催へと近づいている。目標は2年連続の日本一へ変更。雪辱の機会を見据え、静かに左腕を磨く。
写真=BBM