チームにとって苦戦続きとなったシーズン最終盤、この男の気迫だけは際立っていた。
7連戦初戦の9月9日の
巨人戦(東京ドーム)の初回に先制タイムリーを放ち、そこから4戦連続で初回先制打。
新井監督は「彼も個人タイトルというハッキリした目標が見えているので、いい集中力で取り組めている」と、打線を引っ張る三番打者の姿にうなった。
7連戦を迎える時点で打率.296は、巨人・
泉口友汰を2厘差で追っていた。ライバルの前で3戦7安打を放ち、7戦で5度の先制打を含む14安打8打点。打率.307まで伸ばし、泉口に1分3厘差まで突き放した。
さらに、この期間は12度の得点機で8安打。12球団で唯一、大台に乗せる得点圏打率は.422という驚異的な勝負強さだ。
2安打3打点でヒーローとなった15日の
ヤクルト戦(マツダ広島)では、初回先制打が自己最多を更新のシーズン152安打目。さらに1本を加え、リーグ最多安打で
中日・
岡林勇希に3差を付け、出塁率.362もリーグ1位の暫定“3冠”としていた。
ずっと「タイトルは別に獲れると思っていない」と、あくまで平常心を貫いていた。だが、レギュラーシーズンも残りわずかとなると、「そっとしておいてほしいですけど……獲れるように頑張ります」。
明確な意志を持って初タイトルを狙って臨み、チームの負けが混む中で、快音で何度もファンを沸かせた。
20日にチームのCS進出が完全消滅。小園は新井監督とのコミュニケーションのもと、首位打者獲得を優先する方針で、26日のヤクルト戦(神宮)からの3戦は出場せず。
10月1日時点で打率は.306で1位、出塁率は.3615で2位、安打数は1位岡林と9差の159で、
阪神・
近本光司と並ぶ2位タイとなっている。
チームがリーグ3連覇した18年秋のドラフト1位で入団。7年目の今季もチームとして喜びを味わうことはできなかったが、これからも成長の歩みを止めることなく、チームの未来に光をともしていく。
写真=井沢雄一郎