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坂井保之元西武代表が高く評価する「辻発彦」の“野球力”。この1枚に辻のすべてが凝縮されている

 

文=大内隆雄


 先日、西武、ダイエー(現ソフトバンク)で代表を務めた坂井保之さんに食事のお招きを受けた。とにかく球界の“裏の裏の、そのまた裏の裏”まで知り尽くした人。その人の言葉には、千金、万金の重みがある。

 まあ、いまのプロ野球には、そう期待していない坂井さんなのだが、ライオンズの現役選手、OBのことは、さすがに気になる様子。ソフトバンクの工藤公康新監督には、大いに期待していると語った。そこから、ライオンズOBの現役指導者たちの話になったのだが「辻君をみんなもっと評価して活用すべきではないのか。彼の能力は素晴らしいものだよ」と坂井さん。辻君とはもちろん、中日辻発彦野手総合コーチ。昨年の内野守備走塁担当から、格上げされた形で、谷繁元信監督もその手腕に期待している。

 しかし、坂井さんの言う「評価」とは「監督として使え」ということなのである。たしかに、その“野球頭脳”は別格であり、よく例に出されるのが、あの87年の対巨人日本シリーズ第6戦(西武)8回裏の好走塁。二死一塁で秋山幸二の中前打で一気にホームインしたプレーだ。中堅・クロマティの緩慢な返球のスキを突いた辻選手ならではの判断力と走塁技術が光った。「あれは西武の総合力の結晶でもあるけれど、やはり、辻君個人の能力の高さで奪ったホームでもあったんだよ」と坂井さん。

 辻コーチは、現役時代サードからセカンドにコンバートされたのだが、動きが複雑で、走者のけん制や、塁上の激しいプレーもある難しいポジションにアッという間に適応。史上に残る名二塁手となった。あの日本シリーズのホームイン写真は有名になり過ぎたから、今回はこの1枚を。86年の日本ハム戦(後楽園)だが、二走・辻は、この三遊間の打球にどう反応したのか。打球を見るこの目の迫力はどうだろう。彼のすべてがこの1枚に凝縮されている。
おんりい・いえすたでい

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