早いもので今週号は6月1日号。1年の真ん中にさしかかっている。6月は、ノーヒットノーランが多く生まれる月だ。両リーグに分かれてから昨年までノーヒットノーランは68度達成されているが(完全試合を含む)、6月は5月の15度に次ぎ14度も達成されている。何より第1号の
藤本英雄(
巨人)が50年6月28日に達成している(対西日本、完全試合)のが「6月はノーヒッターの季節」を象徴している。セ・リーグで一番最近の
山井大介(
中日)も13年6月28日に達成している(対
DeNA)。
実は、6月28日には、もう1つノーヒットノーランが達成されている。それは65年の巨人戦でバッキー(
阪神)がやってのけたものだ。天下の巨人相手に、満員の本拠地甲子園で、戦後初となる外国人投手が成し遂げた大記録だから、これは価値がある。
バッキーの投球内容は、1失策、2四球の3人の走者を出しただけで、二塁も踏ませないという堂々たるもの(7対0)。奪三振は3とバッキーにしては少なかったが、それだけていねいな投球だった、ということだろう。
バッキーは「ワールド・シリーズで勝ったような気分だ。相手が巨人だから余計うれしい」。マイナーの経験しかないバッキーがワールド・シリーズという表現を使ったのが、何だかおかしいが、よほどうれしかったのだろう。ベンチもバッキーを援護射撃。
杉下茂コーチが、相手の主軸・
長嶋茂雄をのべつまくなしヤジりまくった。「意識過剰にさせてコチコチにさせようと思ってね」と杉下コーチ。その長嶋は「ナックルがあれだけ変化してはねえ。お手上げです」と脱帽だった。
写真は、最後の打者、
国松彰を二ゴロに仕留めマウンド上でジャンプするバッキー。このあと、捕手の
辻佳紀(手前)と抱き合った。
文=平野重治