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ナベツネさんは、まだ及ばない悔しさをムキ出しにするが、それでも朝日ブランドに肉迫する読売ブランド。これは長嶋さんのおかげ

 

文=大内隆雄



 ある日、自分の身に着けているものを、何とはなしにチェックしてみた。シャツはインポートの「バーバリー」のボタンダウン。パンツは「リーヴァイス」のジーンズ。靴下は「マンシング」。靴は「リーガル・ウォーカー」。ジャケットは「インテルメッツォ」。少し値が張るのは輸入物のシャツだけだが、無意識のうちにブランド名に頼って買っている自分がおかしくなった。やはり、日本人はブランドに弱いのである。

 プロ野球の最高級ブランドと言えば巨人長嶋茂雄巨人終身名誉監督が、最初の巨人監督辞任後、どんな誘いも断って“12浪”もして、巨人監督に復帰したのも、巨人ブランドの威力だった。

 その巨人ブランドの「最高権力者」渡邉恒雄巨人最高顧問はしかし、巨人、そして、読売新聞を最高級ブランドであるとは、思っていない(思えない)ようだ。ことあるごとに朝日新聞への対抗意識をムキ出しにしてきた同顧問だが、それはかえって、「どうして朝日の方がまだブランド価値が高いんだ」という心の内を見せてしまう結果になっていないだろうか。

 その昔、大内兵衛という東大教授から50年、法大の総長になった経済学者がいたが、彼は法大総長就任の辞(退任の辞かな?)で「新聞なら『朝日』、雑誌なら『世界』(岩波書店発行)を読みなさい」と語っている。こういう立場の人が、堂々と朝日新聞と岩波書店だけが言論界のブランドだと言い切るのだ。大内とナベツネさんは、約40歳の年齢差があるが、駆け出し記者時代のナベツネさんは、「朝日と岩波のみ尊し」の時代の波をモロにかぶっている。「ニックキ朝日!」となるのは分かるのだ。それでも読売ブランドは、昔はかなり離されていた毎日新聞を抜き去って朝日に肉迫。

 実はコレ、長嶋さんのおかげなのだ。巨人を超高級ブランドにしたのは長嶋茂雄。それに伴い読売ブランドの価値も上昇した。長嶋さんが、巨人にこだわったのは、自分のブランドだったからである。写真は57年12月7日、巨人入団を発表する立大・長嶋。左は品川球団社長。右は宇野代表。今回の野球賭ばく事件、ミスターが一番苦々しい思いをしているに違いない。
おんりい・いえすたでい

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