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13試合もやって1試合も勝てなかったメキシコ・タイガース。旅費も滞在費も自前。ギャラは日本で使え、の不思議なチーム

 

文=平野重治



 小誌11月30日号の「そらそうよ」で岡田彰布さんがプレミア12に関連して、昔は単独チームであれ、選抜チームであれ、対外試合といえばアメリカのチーム相手。それが、いまや、世界中の国・地域と試合するようになったんだなあ、との感慨をもらしていたが、実は、アメリカ相手ばかりの時代に、ポツンとアメリカ以外のチームが挟まっているのをご存じか。

 それは、1966年春に来日したメキシコ・タイガース。筆者の記憶だと「2A級だが、実力は3A、いやメジャーに近い」という触れ込みで、野球ファンは「そりゃ、ちょっと面白いな」と期待して待った。

 ところが――。3月6日に来日したタイガースは、まるでダメなチーム。日本のチームと13試合戦って全敗!来日して10試合以上戦ったチームで、1勝もできなかったのは、いまだに、このメキシコ・タイガースのみ。共同通信が招いたのだが、どういうルートでの来日だったのだろうか。そのうち、「2Aだが、あのリーグは1Aレベル」という評価になり(メキシカン・リーグ所属)、「大事なオープン戦の時期なのに、これじゃ練習にもならない」という声が各球団から挙がった(3月23日帰国)。

 最多の対戦相手は巨人で、5試合もやらされたが、19日の試合で、大黒柱の長嶋茂雄が、右胸の一部をキ裂骨折するアクシデント(全治2週間)。もっともこれは、チームメートの送球を当てたものだが、「タイガース?こんなチームとやってもねえ……。試合じゃないもの」と長嶋。緊張感に欠ければ、ケガも起きやすい道理。

 巨人は55年の中南米遠征でメキシコ・タイガースと戦って1勝5敗の屈辱。だから「今回は絶対負けるな!」と気合が入っての全勝。しかし、こう弱過ぎては、リベンジにもならない。タイガースは旅費、滞在費は自分持ち。入場料の60%を日本側から受け取るだけ。その上、日本で受け取ったお金(円立て)は、日本で使って帰るというのだから不思議なチームだった。

 タイガースのガルシア監督は「審判がひいきする10人相手では勝てない」の捨てゼリフとともに帰国した。写真は、例によって球審に文句をつけるガルシア監督(左)。
おんりい・いえすたでい

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