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野球写真コラム

“円陣発声ゲーム”に興じる諸君、「プロ野球あってこその自分」であることに思いをいたせ。この株券は、広島存続を願う人たちの血と汗の結晶だ

 


 このところの、各球団選手の“小バクチ”の報道を見ていると、心底情けなくなる。“円陣発声ゲーム”は、野球賭ばくのような「悪」ではない、みたいな言い方もされるが、良いとか悪いの話ではなく、1000円とか5000円で勝った、負けたと面白がっているその心根がしみったれていてイヤなのである。1000円、5000円の額がしみったれていると言うのではない。1000円、5000円を出せるのなら、どうして、もっと社会のほうに目を向けて、「このお金でどういうことに貢献できるか」という考えにならないのだろうか。

 百歩譲って“円陣ゲーム”はまあ仕方ないとしよう。勝った選手、負けた選手が、そこで動いたお金の何割かを日本赤十字なり、NHKなりを通じて寄付をする、これだったら拍手はしないが、“小バクチ”をあえてとがめだてはしない。そんなことしたら円陣発声でお金がアチコチしているのがバレてしまう?それなら初めからやるなよ。

 こういうゲームを面白がってる選手たちには「プロ野球選手という立派な職業」が世の中にどうやって認められるようになったかを教えてやる必要がある。プロ野球は初めから両リーグで二千何百万人ものファンを集めるプロスポーツだったのではない。それはそれは大変な時代を経て、現在のようなナショナル・パスタイム(国民的娯楽)となったのである。

 例えば、2リーグ分立の1950年(昭和25年)にスタートした広島は、すぐ資金が手詰まりになり、球団存続が危ぶまれる大ピンチに。あの“樽募金”が登場した時代だ。広島は昭和の30年代でも給料の遅配があったそうだ。写真は50年10月30日に発行された広島球団の株券だ。株主は「白石後援会」。これは当時のコーチ兼主将だった白石勝巳選手の後援会が、球団のためならと1000株、5万円の株券を買ったのだ。多分、白石さん自身もお金を出していたことだろう。50年の5万円といったら大変な金額だ。「とにかくつぶれないでほしい」の一念でカープファンは、頑張ったのだ。だから、いまのプロ野球があるのだ。
おんりい・いえすたでい

おんりい・いえすたでい

過去の写真から野球の歴史を振り返る読み物。

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