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コリジョンルールでは、あのイギリス艦隊とスペイン「無敵艦隊」の決戦は不可能だった!?この与那嶺のようなプレーが見たいのに

 

文=大内隆雄


 1588年にイギリス艦隊がスペインの130隻のいわゆる「無敵艦隊」を破り、イギリスが世界史の舞台に華々しく登場してくるのは、大学入試を世界史で受験した人たちなら、イヤというほど頭にたたき込んだ事項だろうが、なぜイギリス艦隊が強力なスペイン艦隊を撃破することができたのかを、うまく説明できる元受験生は案外少ないのではないか。

 トレヴェリアンなどイギリスの歴史家によると、イギリス艦隊は、舷側に取り付けた大砲を有効に使用する技術を持っていたが、スペイン艦隊は、大砲よりも、相変わらず舳先の衝角を敵艦に突き刺して、兵が敵艦に乗り込み肉弾戦に移る旧式の戦いにこだわったことが敗因の1つだったと説明する。

 トレヴェリアンによると、スペイン艦隊の戦法は、おだやかな地中海用の戦法で、イギリスやアイルランド周辺の荒海では無効、不能だったという。

 唐突だが、この英西艦隊決戦、例のコリジョンルールならどうなっただろう。走者は、捕手をぶっ飛ばす肉弾戦を覚悟しているのに、不可能になり、守る側は肩の強い外野手をそろえて、ライフルアームやレーザービームで、相手の土手っ腹に穴をあけてやろうとしているのに、捕手が前に出てしまっては、着弾地点は船ではなく海水になってしまう。コリジョンルールで英西が戦ったら戦いにならない。

 コリジョンルールは、かような具合で、守るも攻めるも不完全燃焼となるような“悪法”なのである。こんなことを書くと、「手から滑り込むのはアホや。わざわざケガするようなもの。ホームへはすべて足から」と主張する福本豊さん(元阪急)に怒られるだろうが、福本さんの走者保護の観点もよ〜く理解できるのだが、写真のようなシーンが永久に見られなくなるのかと思うと寂しくなる。

 写真の走者、与那嶺要(元巨人ほか)は、アメフトの49ersに所属したことがあり、とにかくプレーが激しかった(スマートな激しさ!)。足、スネ、太ももで捕手のミットを蹴上げて落球を誘うのが得意ワザ。コリジョンルール、もう少し緩めてはどうだろう。読者はどう思われるだろうか。
おんりい・いえすたでい

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過去の写真から野球の歴史を振り返る読み物。

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