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広島・新井の「宝クジ打法」には笑ってしまった。××打法は数々あったが、寿命は案外短い。一本足打法と天秤棒打法は不滅だ

 

文=平野重治


 広島新井貴浩内野手が、4月26日の対ヤクルト戦(神宮)で史上47人目の2000本安打を達成したが、新井の談話の中で面白かったのは「昔は2バウンドのボールさえ振っていた」。それだけ、ムチャ振りを繰り返してきたのだが、そのバッティングについた名が「宝クジ打法」。それほど当たらなかったワケだ(当たらない打撃に××打法という名がつくのは珍しい)。

 昔から××打法と名付けられた珍打法は多かった。あの“世界の王”の一本足打法をはじめ、天秤棒打法、振り子打法、コンニャク打法、ガニ股打法etc。逆V字打法というのもあった。最後のものは大杉勝男(ヤクルトほか)が自ら命名したものだが、これは、ご本人の説明がないと、とうてい理解不可能。大杉は「気持ちアッパーで振り出して、最後は上からかぶせる感じになるから逆V字なんだよ」と説明してくれたが(大杉のスイングは、むしろ、その反対でダウンで入ってアッパーに移る感じだったが)、分かったような分からないような、まあ天才のみぞ知る世界なのだろう。

 ××打法、話題になるときは、パーッと広まるが、その寿命は短い。どうかするとイチロー(オリックス、現マーリンズ)の振り子打法でさえ忘れられがちで、コンニャクやガニ股は、当事者の名前が出たときに思い出されるぐらいだ。ちなみにコンニャクは梨田昌孝(近鉄、現楽天監督)、ガニ股は種田仁(中日ほか)の打法。担当記者の間だけで話題になり消えていったものもある。堀場英孝(大洋ほか)は、両グリップを、耳の前に持ってくる構えだったが、大洋(現DeNA)の担当記者は、これを「もしもし打法」と名づけた。しかし、堀場が89年限りで引退すると、すぐ忘れられてしまった。

 ××打法で永遠の生命を保つのは一本足打法(しかし、これはもう巨人王貞治のもの、というより普通名詞化している)と、今週の1枚、天下の奇観とも言うべき近藤和彦(大洋ほか)の天秤棒打法だろう。この写真を見たら、だれもが、「ウッソ〜!?」となるだろう。
おんりい・いえすたでい

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過去の写真から野球の歴史を振り返る読み物。

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