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打者は大谷の160キロ超でも当てられるが、山口高志の速球にはかすりもしなかった。野村氏に「参った」と言わせた山口の速球とは?

 

文=大内隆雄


 ここまで来ると、日本ハム大谷翔平の“二刀流”にイチャモンをつける人もいなくなっただろうが、実は筆者は、依然として不満なのである。あの速球とフォークとスライダーは、すべて超一級品で世界レベル。いますぐメジャーでやっても18勝4敗ぐらいの数字はお茶の子だろう。しかし、打者としてはどうか。メジャーの飛ばない使用球と投手のムービングファストボールを“飼い慣らす”のは容易なことではない。大谷はやはり投手一本!と自信たっぷりに言い切ってみたのだが、本誌10月17日号の「野村克也の本格野球論」を読んで、その自信がグラついてしまった。元阪急の山口高志投手のストレートのほうが大谷よりすごいというのだ。

「私の27年間に及ぶ現役生活で、真っすぐのスピードNo.1といったら山口高志だろう。バッターが『真っすぐ』と分かっていながら、その真っすぐにバットがかすりもしない」とノムさんは言う。実は、関大2年時から山口を見てきた筆者もそう思う1人だ。それでも164キロまではあったかどうか……(のち大谷は165キロまで伸ばす)。

 しかし、ノムさんは言う。「160何キロというスピードが出たらバッターはクルクル空振りをするはず。ところが皆、大谷の速球をバットに当てている」。打者のバットがかすりもしない山口と当てられる大谷の違いはどこにあるのか?ノムさんは、大谷は指先の力が弱くてボールにスピンがかからないから手元で伸びず当てられると言う。山口のかすりもしない速球については「私の野球人生の中で、あの真っすぐだけは参った、と言わざるを得ないものだった」と語るだけ。スピンうんぬんなら170センチあるかないかの山口は、大谷よりかなり小さなてのひらと短い指の持ち主だ。いいスピンをかけるのはむずかしいだろう。筆者は、山口のこの写真にヒントがあると考える。

 背番号を打者に見せる変則投法、なんて表現が使われることがあるが、山口の場合は、さかさまの背番号を見せる投法。これは81年のもので翌年引退となるのだが、全盛期は帽子が左足にくっつきそうだった。この“ねじ込み”がスピードを生んだ、と勝手に思っている。
おんりい・いえすたでい

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過去の写真から野球の歴史を振り返る読み物。

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