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大谷の天井弾はいったいどれぐらい飛んだのか?東京ドームの“前身”の後楽園なら間違いなく場外。後楽園場外第1号を打った男

 

文=大内隆雄


 11月13日の侍ジャパン-オランダ戦[東京ドーム]で日本ハム大谷翔平の放った天井直撃弾の衝撃は筆者の中でまだ消えていない。アレがドーム球場でなかったら、正確ではなくとも、おおよその飛距離は分かったハズだ。160メートル?いや、170メートルかも。ゾクゾクするような想像である。

 東京ドームの兄貴分である後楽園球場(建設場所が若干ズレているので先代とは言いにくいので、兄貴分とした)なら、文句なしに場外ホームラン(この言葉の響きがなんともいいのだ)。後楽園史上最長と言われた1956年の日米野球で飛び出したドジャースのギル・ホッジスの打球(左中間スタンドのはるか上を通って白山通りまで転がったと言われる)は550フィート(約168メートル)と推定された。大谷が後楽園であの打球を打ったとしたら、方向は右中間だが、どんな軌跡でどこまで飛んだのだろうか──。まったくの話、こういう想像の楽しさに勝るものはない(だからドーム球場は嫌いなのだ)。

 ところで、1937年に開場した後楽園球場だが、場外ホームラン第1号を打ったのはだれかご存じだろうか。それはフィリピンから巨人にやってきたアチラノ・リベラ外野手(写真)。1939年の1年間だけのプレーだったが、とにかく打球のスピードと飛距離がケタ外れ。8月24日の対金鯱8回戦、巨人打線は、金鯱の中山正嘉投手にわずか3安打に抑えられたのだが4対1の勝利。唯一のチャンスとも言える6回の二死満塁で六番・リベラが左翼場外に消えるグランドスラムを放ったので巨人は勝った。「リベラの浅黒い顔が青くなったぜ」と、ホームで迎えた七番・平山菊二外野手が言ったと千葉茂さん(この試合の二塁手)から聞いたことがある。リベラ自身も驚くような打球だった。

「巨人はこの年の正月にマニラ遠征をやった。7勝2敗だったが、2敗はカスタムズというチーム(税関吏のチーム)にやられた。2試合ともスタルヒンが、リベラに滅多打ちされたんや。この印象が強烈で日本に引っ張ってきたんやろうな」と千葉さん。なぜか1年で帰ってしまったが、1年のレンタルだったのか(40年も選手登録はされていた)。
おんりい・いえすたでい

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