週刊ベースボールONLINE

Professional Report 2013〜元巨人チーフスカウト発[中村和久]〜

山川穂高[富士大]

 

沖縄生まれ東北育ち
久々に出現した右の和製大砲

アマチュア球界屈指の右の大砲である。沖縄で過ごした高校時代からその打棒は注目されており、大学は岩手の富士大へ。そのスイング力は社会人に混じっても見劣りはせず、昨年12月には日本代表として国際大会を戦った。スケール感あふれる打力が最大の武器。プロのスカウトもその動向を注視している。

【打撃フォーム=8.5点】
 素材としてはリストが柔らかく、そして強く、体全体にパワーがあり、その打力に大いなる魅力を感じる選手である。しかし打撃フォームをチェックしていくと、前足(左足)がアウトステップする傾向が見られる。これでは下半身を使ったスイングができず、上体のみで振りにいってしまうことになる。下級生のころは上半身と下半身のバランスが良かったが、ここ最近はボールを強くたたこうという意識が強いせいか、ボール球になる外角のスライダーも追いかけて手を出してしまうケースが多く見られる。ただ、この部分は下半身の使い方が矯正できれば、自ずと改善されるはずだ。

【選球眼=8.5点】
 内角球は強くたたけるが、外角球になるとミート率が落ちてしまう。これは先に述べたフォームから来るものが原因となっている。このアウトステップが解消されれば、目線が外に行くことはなくなり、外角球の見極めもできるようになるだろう。その精度を高め、この弱点をしっかりとカバーしたい。

【守備力=8.5点】
 三塁手としての守備では、三塁線方向への動きは気にならないが、三遊間へはやや反応が遅いと言わざるを得ない。また、バント処理時の前へのチャージも弱い。前後左右の一歩目。この動きを入念に繰り返してフットワークを良くすれば、すべてが良い方向へと向いてくるだろう。もともと肩は強く、捕球から送球へ移る一連の動作は問題ない。すべては発展途上で、課題を一つひとつ克服していけばレベルアップし、次の評価へとつながっていくだろう。

【走塁=8.5点】
 巨漢タイプで特別にスピードがあるわけではないが、打球判断、奪塁意欲に問題は見られない。試合経験が豊富で、走塁面もそつなくこなしている。これらの技術をベースにして、一歩目のダッシュ力がつけばトータルで向上するだろう。今は基本であるベースランニングを数多くこなしてほしい。

【3拍子のバランス=8.5点】
 そのバランスを比較すれば、やはり「攻」が飛び抜けて秀でており、「守」と「走」はまだまだこれからといった印象が強い。それらを基本から見直してきちんと取り組めば、今後の成長の余地は十分にある。

【判断力=8.5点】
 守備における有走者時のバント処理など、状況を把握して的確に判断し、処理できる能力は備わっている。打席でも進塁打や右打ちなど、状況理解する力と実践する力を併せ持っている。あとは、打席で無闇にボール球に手を出すことなく粘りを発揮できれば、さらにその能力はアップしていくはずだ。

【メンタル=9.0点】
 打席に立てば、その攻撃的なスタイルを存分に感じさせており、闘志を表に出せるタイプである。対戦する投手は、マウンド上で相当な威圧感を感じるのではないだろうか。ただ、その気持ちを空回りさせては元も子もない。同時に冷静な駆け引き、読みも追求していきたい。

【体力=9.0点】
 身長は特別に高い方ではないが体重は3ケタ近くあり、中村剛也(西武)のような堂々たる体格の持ち主と言える。それが破格のパワーを生み出しているのだろう。高校時代には、中堅122メートルの球場でバックスクリーンにライナーで突き刺した本塁打もあったという。プロで戦っていける体力はすでに持ち合わせているようだが、現状に甘えてはいけない。引き続き体力強化、そして体幹強化に取り組んでもらいたい。

【将来性=9.0点】
 まずは三塁手としてチャレンジしてもらいたいが、今以上の打力がついてくれば、プロでは一塁手としてもやっていけそうだ。チーム事情によっては外野に回る可能性もあるだろう。指名打者制のないセ・リーグでは定位置を確保するために守備力が不可欠となるが、パ・リーグならば守備の成長が少々遅れたとしても、打力を生かして指名打者での起用が可能となる。だが、現時点では守備もきちんとこなせる長距離打者を目指してほしい。


【総合力=9.0点】
 その素質は十分に感じられ、それだけにまだまだ発揮されているとは言えない。久々に出てきた和製大砲である。通算364本塁打をマークした江藤智は、広島時代の豊富な練習量でのし上がり、立派な四番打者に成長。そして後に巨人、西武と活躍の場を移した選手だった。山川もそのような厳しい環境で鍛えられれば、高卒、大卒の違いはあるものの、江藤クラスのホームランバッターとなる可能性を秘めている。そのためには、まずは全国レベルで確固たる実績を残したい。富士大は昨秋の神宮大会において、準決勝で延長戦の末に東京六大学代表の法大に惜敗している。こういった強豪校の壁を乗り越えれば、自ずと評価は付いてくるはずだ。

九里亜蓮の三大長所
スイング力 - 飛距離の源
国際経験 - 日本代表として海外遠征
伸び率 - 磨けば鋭さ増しそう

PROFILE
やまかわ・ほたか●1991年11月23日生まれ。沖縄県出身。175cm、95kg。右投右打。城北小5年から首里マリナーズで野球を始める。城北中ではヤングリーグ・SOLA沖縄に在籍し、全国大会3位。中学3年間で身長は155cmから20cm伸び、体重は30kg増の90kgに。中部商高では2年秋から四番に座り、高校通算27本塁打。3年夏は県大会決勝で敗退した。富士大では1年春から四番。北東北大学リーグでは1年秋に打点王、1年春、2年春、3年春にベストナインを受賞している。昨年のBFAアジア選手権では大学生野手として唯一日本代表に選ばれた。

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング