野球センスは抜群
日本球界が待望する右の大型内野手

春のセンバツが盛況だったが、不出場組にも高校生ドラフト候補は多数存在する。その筆頭格といえるのがこの渡邉諒(東海大甲府高)である。打って走って守って、トータルで力を発揮する大型遊撃手。集大成の夏へ向け、どれだけその能力を伸ばしていけるか。

【打撃フォーム=8.5点】
　軸足にしっかりと体重が乗ったときにはセンター中心に鋭い打球を打つことができる。ただ、現時点でその精度はまだ低いと言えそうだ。良くないときはバックスイングが浅く、トップの形をしっかり作れない。そうなると軸足にタメができないのだ。打席での積極的な姿勢はこの選手の持ち味でもあるが、初球からボール球でも追いかけて打ってしまうのは修正すべき点だろう。しっかりと待ち、ストライクゾーンに来た球に対応する姿勢を追求してほしい。


【選球眼=8.0点】
　基本動作を今一度確認してほしい。外角のスライダーを追いかけて打ちにいく傾向があるので、今後は自分のポイントまで引きつけて打つことを徹底したい。それができてくれば、自ずとアベレージも良くなる。インパクトでたたいたときの速さは非凡なものがあり、長打の出る力強いスイングができている。それだけに、ストライクゾーンを把握し切れていないのは惜しい点なのだ。

【守備力=8.5点】
　三遊間からの送球時には肩の強さを確認することができる。ショートを守れる貴重な右の内野手である。送球面では良いものを見せているものの、捕球から送球という一連の動作はまだ確立されていない。守備範囲に関してはもう少し左右の幅を広げたいところだ。ただ、この部分は向上する余地が十分にあるため、最後の夏に向けて、守備面の鍛錬も怠らないでほしい。

【走塁=8.5点】
　脚力、そしてバネがある。スタート、ベースランニングも良く、プロ野球でいえば一番も打てる坂本勇人(巨人)タイプと言えるだろうか。素材としては申し分ない。今後は次の塁を狙う意欲、ベースワークのテクニックをさらに上げてもらいたい。スライディングの巧みに関しては、今後学んでいくはずである。

【3拍子のバランス=8.5点】
　バランスはとれているものの、その能力はまだまだ発揮できていない。才能の一端を見せたのは昨夏の甲子園だった。5試合で1本塁打を含む6安打。打率・316の好成績を収めた。また、走塁面でもスピードを生かして三塁打、そして盗塁もマークしている。パンチ力、脚力を兼ね備えており、その潜在能力は高い。一方で守備面では2失策と課題を残している。それらの技の精度を磨いていけば、プロでも通用する「打てる遊撃手」になれるはずだ。

【判断力=9.0点】
　総合的に見れば判断力に優れたセンスを持っていると言えそうだ。野球というものをきちんと理解しており、それを踏まえたプレーができている。ただ、投手との駆け引きという面で考えれば、そこは欠点と言わざるを得ない。具体的には、有走者時にも外角低めのボール球に手を出してしまう点が気がかりである。ただ、そこをきちんと修正できれば、さらに高いレベルのバランスを手にすることができるだろう。

【メンタル=9.0点】
　メンタルの強さを大いに感じる選手だ。チャンスで自分が決めてやるという気概、負けん気はひしひしと伝わってくる。「アグレッシブ」という言葉が当てはまる選手である。昨夏の甲子園では、2年生ながら大舞台でも気負うことなく良いスイングができており、ハートの強さを存分に示した。新チームでは主将を務めており、その責任感がこの選手の能力を引き出してくれるだろう。

【体力=8.5点】
　下半身のバネ、脚力はあるものの、総合的な体力にはやや欠けるため、試合終盤に疲れが出ると、どうしてもヒザが使えず硬くなる傾向が見られる。こうなると、上半身の力に頼るバッティングになってしまう。今は内野ノックを数多く受けて、その弱点を補ってほしい。体型はバランスが良く、見栄えもする選手。継続して鍛えていけば、線の細さもやがて消え去るだろう。

【将来性=9.5点】
　大型内野手で長打力も兼備するタイプ。将来的にはプロでもクリーンアップを任せることができる逸材である。需要と供給のバランスからすれば、「右の強打の遊撃手」はプロにとってノドから手が出るほど欲しい人材である。ドラフトでは上位で消える存在であることは間違いない。

【総合力=9.0点】
　まだまだ荒削りなところが多いものの、大型内野手としてのセンス、素材の良さを感じさせる好選手である。繰り返しになるが、今後はとにかく下半身強化を怠らないことだ。今年の野手のドラフト上位候補には、山川穂高(富士大)など大学生に同じ右の好打者が多数存在するが、順調に成長曲線を示していけば、キャリアで勝る彼らにも劣らない評価を得ることになるはずである。現時点では気の強さが災いしている面も見られるが、それは経験を積んでいけば解消されるだろう。高校の2学年上には高橋周平(中日)という良いお手本がいた。しっかりと上を見据えて成長していきたいところだ。

渡邉諒の三大長所
パンチ力 - 右の大砲候補
脚力 - 攻守走で能力を発揮
野球センス - あらゆるプレーを熟知

PROFILE
わたなべ・りょう●1995年4月30日生まれ。茨城県出身。178cm、75kg。右投右打。小学1年時に土浦サニーズで野球を始める。土浦三中では竜ケ崎シニアに所属し、3年時に全国大会出場。東海大甲府高では1年春からベンチ入りし、同春の関東大会で本塁打を記録。同夏は2学年上の高橋周平(現中日)が主軸にいながら四番・一塁を任される。2年春から一番・遊撃。今夏の甲子園では龍谷大平安高との2回戦で本塁打をマークするなど、攻守で存在感を見せてチームを4強へ導いた。新チームからは主将を務め、昨秋の関東大会では佐野日大との1回戦で左越え2ランを放つも初戦敗退を喫した。