無死一、二塁で打者は送りバントを試みましたが、投手前に上がる小飛球となりました。投手はこれに触れることなく目の前に落としてから三塁に送り、さらにボールは二塁へ送られダブルプレーとなりました。このとき、攻撃側の監督は「インフィールドフライであり、アウトになるのは打者だけだ」と抗議してきました。 ダブルプレーは成立します。無死走者一、二塁で内野フライなら、インフィールドフライですが、インフィールドフライの規則である2.41には
「打者が打った飛球(ライナーおよびバントを企てて飛球となったものを除く)で、内野手が普通の守備行為をすれば、捕球できるものをいう」 とあります。
投手がボールをグラブに触れずに目の前に落としたから、併殺は成立しましたが、もし、触れてから落としたならば、これは故意落球で打者アウトだけになります。故意落球で打者アウトを規定している規則6.05(L)にはこうあります。
「ノーアウトまたは1アウトで、走者一塁、一・二塁、一・三塁または一・二・三塁のとき、内野手がフェアの飛球またはライナーを故意に落とした場合。ボールデッドとなって、走者の進塁は認められない」 とあります。
さらに、[付記]として
「内野手が打球に触れないでこれを地上に落としたときには、打者はアウトにはならない。ただし、インフィールドフライの規則が適用された場合は、この限りではない」 とあります。
78年の
ヤクルト-阪急の日本シリーズ第1戦(後楽園)の四回裏に、ヤクルトは無死一、二塁で
大矢明彦にバントを命じました。ところが、打球は投手前の小飛球となり、阪急の
山田久志投手は、グラブに触れてからボールを前に落として三塁に送球しました。
審判はグラブに触れているので故意落球として大矢をアウトとし、ボールデッドなので走者は一、二塁に戻されました。