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ホームスチールを阻止するために捕手がホームベースの前に飛び出して投球を受けた場合の処置は?

 

三塁走者がホームスチールしてくるのに気づいた捕手は、あわてたのか、ホームベースの前に飛び出して投球を受け、走ってきた走者にタッチしました。完全にアウトのタイミングでしたが、球審は打撃妨害を宣告し、打者に一塁、三塁走者には得点を許しました。この判定の根拠はどこにあるのでしょうか。

 規則7.07にこう記されています。

「三塁走者が、スクイズプレイまたは盗塁によって得点しようと試みた場合、捕手またはその他の野手がボールを持たないで、本塁の上またはその前方に出るか、あるいは打者または打者のバットに触れたときには、投手にボークを課して、打者はインターフェアによって一塁が与えられる。この際はボールデッドとなる」

 81年4月30日の大洋対阪神戦(横浜)の2回表、大洋の山下大輔はホームスチールを企てましたがアウトを宣告されました。大洋の土井淳監督は阪神の若菜嘉晴捕手の打撃妨害だと抗議してきました。土井監督は「若菜はホームベースの前で捕球したのだから、規則7.07により打撃妨害で山下は得点で打者の福嶋久晃は一塁に出塁できる」との主張です。しかし、審判団は「若菜はホームベースを通過してから捕球した」として抗議を一蹴しました。

 現在の規則書からは削除されていますが、昔の規則書には7.07の[注二]として、次のような一章がありました。

「本来、打撃妨害とボークが同時に起こることもなく、また捕手がボールを持たないで本塁の上またはその前方に出たためにボークとなる条項がないにもかかわらず、本項で“ボーク”の文字が使用されているのは、本塁を得ようとする三塁走者に本塁を与えるために、便宜上設けられたもの(以下略)」と解説されています。規則書からは以上の文言は消えましたが、ボークで生還の意味は、いまでも変わりません。
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元日本野球規則委員・千葉功による野球ルールコラム。

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