打者はセーフティバントを企て一塁に走りましたが、バックスピンがかかっていた打球は逆戻りしてきて、本塁ベースの手前で打者が投げ捨てていったバットに当たりました。これに対して守備側は、打球とバットが2度当たったのだから、打者は守備妨害でアウトだと抗議してきました。しかし、球審は取り合わず、打者は一塁に生きています。この審判の処置は正しいのでしょうか。 審判の処置は正しいのです。打者アウトの規則を並べた6.05(h)にはこう明記されています。
「打者が打つか、バントしたフェアの打球に、フェア地域内でバットが再び当たった場合。ボールデッドとなって、走者の進塁は認められない」 これに関しては、打者はアウトで、ボールデッドになるのは当然です。しかし、この規則は以下のように続きがあります。
「これに反して、フェアの打球が転がってきて、打者が落としたバットにフェア地域内で触れた場合は、ボールインプレイである。ただし、打者が打球の進路を妨害するためにバットを置いたのではないと審判員が判断したときに限られる」 要するにボールの方から勝手に落ちていたバットに当たったとき、打者が故意の行為ではないと審判員が判断したときには、成り行きのままプレーを続行するということです。
85年7月11日の
阪神対
ヤクルト戦(甲子園)で、この二度当たりがありました。3回表のヤクルトの攻撃のときです。一死二、三塁で
八重樫幸雄は二塁前に緩いゴロを打ちました。このとき、八重樫が放り出したバットが、マウンドの横で打球に当たってしまったのです。
放り投げたバットがボールに当たったのですから、6.05(h)の前段が適用されます。八重樫はアウトで二、三塁の走者の進塁も認められませんでした。