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左打席に入っていた打者が投手の投球寸前に右打席に移った場合の処置は?

 

スイッチヒッターのこの打者は、相手が右投手なので初めは左打席に立っていましたが、1、2球続けてストライクを見送ると、3球目に投手が投げようとする寸前に球審に断りもせず、右打席に移りました。投球は完全なボールでしたが、球審はどう宣告すべきでしょうか。

 球審は投球へのジャッジではなく、打者にアウトを宣告しなければなりません。規則6.06は「次の場合、打者は反則行為でアウトになる」として(b)に、

「投手が投球姿勢にはいったとき、打者が一方のバッタースボックスから他方のバッタースボックスに移った場合」

 と記しています。

 この規則の[注]として、「投手が投手板に触れて捕手からのサインを見ているとき、打者が一方から他方のバッタースボックスに移った場合、本項を適用して打者をアウトにする」とあります。

 打者には何度でも打席を替わる権利があります。随分昔ですが、63年8月28日の阪神中日戦(甲子園)で中日の柿本実投手は2回表に初め右打席に入りましたが、阪神の村山実投手が1球目にボールを投げると、球審にタイムを要求して左打席に移りました。カウントが2ボール1ストライクになると今度は左から右に移り、3ボール1ストライクになると右から左です。3ボール2ストライクになるとまた右の打席に戻りましたが、結局は三振しました。

 投手が投げようとしたとき、打者が打席を移ったのを見たことが一度だけあります。71年5月26日の東映対南海戦(後楽園)のことでした。8回裏に東映先頭の左打者・張本勲は、南海の村上雅則投手が4球目を投げる寸前にホームベースを横切って右の打席に移ったので、投球は張本の背中を通ってド真ん中のストライクとなりました。球審は「ストライク」を宣告しましたが、これは間違いで張本にはアウトを宣告すべきでした。その球審は後日、戒告処分を受けました。
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元日本野球規則委員・千葉功による野球ルールコラム。

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