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よく分かる!ルール教室 / 元日本野球規則委員 千葉功

スイッチヒッターが左右のバッタースボックスを変えるのは同一打席内では何度まで許される?

 

あるスイッチヒッターが、初めは右打席に立っていましたが、相手が苦手の投手とあって2球目は左打席に変わりました。3球目はまた右打席に変わりましたが、そこで空振りすると、投手が4球目を投げようとするとき、また左打席に変わりました。とたんに球審からアウトを宣告されましたが、打席を変わるのは何度まで許されるのですか。

 打者が打席を4度変えたからアウトを宣告されたと考えているようですが、それでアウトを宣告されたのではありません。投手が投げる寸前に打席を変えたからです。

 打者の反則行為でアウトが宣告されると述べている規則6.03(a)の(2)には、「投手が投球姿勢にはいったとき、打者が一方のバッタースボックスから他方のバッタースボックスに移った場合」とあります。つまり打者は打席を何度も変わったからアウトを宣告されたのではなく、投手が投球姿勢に入ってから打席を変えたので、アウトを宣告されたのです。

 6.03(a)の【注】には「投手が投手板に触れて捕手からのサインを見ているとき、打者が一方から他方のバッタースボックスに移った場合、本項を適用して打者をアウトとする」と念を押しています。

 打者が打席を変えたためにアウトになったのを一度だけ見たことがあります。

 71年5月26日の東映対南海(後楽園)のことです。8回裏に東映の先頭打者の張本勲は、南海の村上雅則が4球目を投げる寸前にホームベースを横切って右の打席に入ろうとしたので、投球は張本の背中を通ってド真ん中のストライクとなりました。

 このとき、球審は「ストライク」を宣告しましたが、これは間違いで張本をアウトにすべきでした。明らかなミスというので、後日この球審は戒告処分になっています。
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元日本野球規則委員・千葉功による野球ルールコラム。

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