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よく分かる!ルール教室 / 元日本野球規則委員 千葉功

無死二塁。投手が投手板上から定位置の遊撃手にボールを投げた。球審がボークを宣告したが、なぜ?

 

無死二塁で救援投手が登板。打者に1球目を投じる前に、投手板上から定位置に立っている遊撃手にボールを投げました。球審はボークを宣告しましたが、なぜでしょうか。

 二塁ベースから離れて定位置に立っている遊撃手に投げたからです。投手はけん制球のつもりでしょうが、ボークの規則を並べてある6.02(a)の(3)には「投手板に触れている投手が、塁に送球する前に、足を直接その塁の方向に踏み出さなかった場合」とあります。ここに「塁に送球する前に」とあるのに注意しましょう。けん制球とは野手ではなく、あくまでも“塁”が対象となるのです。

 したがって二塁(遊撃手)へのけん制球は、ベースに入っているか、入らないまでもベースの近くにいるときに投げたのならば、“塁”に送球したことになりますが、定位置に立っている遊撃手に投げたのでは、“塁”に送球したとは認められません。

 この規則に違反したためにボークを宣告された例が日本シリーズでありました。85年に阪神西武が対戦したときの第6戦(西武球場)のことでした。9回表の阪神の攻撃のとき、二塁走者が真弓明信で、打席に掛布雅之を迎えたときです。西武の渡辺久信投手は第1球を投げる前に、振り向きざまに定位置に立っていた石毛宏典遊撃手に投げたのです。石毛遊撃手が二塁ベースのカバーに走っていたのならともかく、ほとんど定位置に突っ立ったままのときですから塁に投げたことにはならず、ボークが宣告されました。最高の舞台である日本シリーズでは、そもそもボークが宣告されること自体が珍しく、15年までに13度しかありません。渡辺投手も日本シリーズで90回1/3も投げているのに、ボークを宣告されたのはプロ入り2年目のこの1度しかありません。若い時代の初歩的なミスでした。
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元日本野球規則委員・千葉功による野球ルールコラム。

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