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よく分かる!ルール教室 / 元日本野球規則委員 千葉功

内角速球が避けようとしなかった打者の手首に。故意に当たる仕草がなくても、宣告は「ボール」。“死球”にはならないのはなぜ?

 

打者は内角への速球を避けようとしなかったので、手首にボールが当たってしまいました。打者は死球と判断し一塁に歩きかけましたが、球審の宣告は「ボール」です。打者にはボールに故意に当たる仕草はありませんでしたが、それでも死球にならないのでしょうか。

球審の宣告に間違いはありません。規則5.05(b)の(2)には「打者が打とうとしなかった投球に触れた場合」に安全に一塁が与えられると定めていますが、これには以下の条件も明記されています。

「(A)バウンドしない投球が、ストライクゾーンで打者に触れたとき、(B)打者が投球を避けないでこれに触れたときは除かれる」

 さらにこの規則の最後には「投球がストライクゾーンの外で打者に触れ、しかも、打者がこれを避けようとしなかった場合には、ボールが宣告される」とあります。最近は打者も巧妙に投球に当たる格好をするので、当たっても死球にならないケースがしばしば見受けられます。メジャーでも大問題になったことがありました。

 1966年にドジャースのドライスデール投手は5月14日から6月8日にかけ、58イニング連続無失点と6試合連続シャットアウトという2つのメジャー記録を樹立しましたが、その途中の5月31日のジャイアンツ戦で9回表に無死満塁のピンチを招きました。ここで打者のディーツに対し、2ボール2ストライクからぶつけてしまったので、押し出しの1点です。これで連続無失点は44イニングでストップし、連続シャットアウトも4試合で終わりかと思われたのですが、球審の宣告は「ボール」。ディーツに避ける行為がなかったというのがその理由です。記録が掛かっていたシーンだけに、議論となりました。
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元日本野球規則委員・千葉功による野球ルールコラム。

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