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よく分かる!ルール教室 / 元日本野球規則委員 千葉功

走者一塁で打者が右前へ。一走が二塁空過で封殺の場合、打者の記録はどうなる?

 

無死一塁で打者は一、二塁間を抜いたので一塁走者は二塁を回って三塁まで進みましたが、実は二塁ベースを踏んでいません。これを見ていた二塁手はすぐボールを要求し、審判にベース空過をアピールしたのでアウトが宣告されました。明らかなライト前安打でしたが、記録上は安打とはならないのでしょうか。

 打球が明らかな安打性のものであったとしても、一塁走者が二塁ベースを空過してアウトを宣告されたからには、記録上は打者の右ゴロとして処理されます。

 野球規則9.05(b)には、安打を記録しない場合として、このような記述があります。

「(1)打者の打球で、走者が封殺(フォースアウト)されるか、または野手の失策によって封殺を免れたような場合。(2)打者が明らかに安打と思われるボールを打ったにもかかわらず、進塁を義務づけられた走者(打者が走者となったため)が、次塁の触塁を誤って、アピールによってアウト(封殺)になったときは、その打者には安打を与えず、打数を記録する」

 このように定められていますから、打者には安打は与えられません。

 安打を打ったにもかかわらず、走者のミスで安打を取り消される打者が年に数人出ますが、このようなケースで最も手痛い被害を受けたのは1956年の西鉄の中西太でしょう。この年、わずか.0005の差で首位打者を同僚の豊田泰光に譲りましたが、実は安打を1本取り消されていたのです。4月3日の高橋戦の8回に、走者一塁で右前打を打ったのですが、代走に出ていた一塁走者の玉木春雄が二塁を踏まずに三塁へ進んでいたのでアピールアウトになったのです。

 このときの安打が生きていれば、中西は豊田に2厘差をつけてトップに立っていた計算になります。
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元日本野球規則委員・千葉功による野球ルールコラム。

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