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よく分かる!ルール教室 / 元日本野球規則委員 千葉功

投手板と二塁ベースの間に立った塁審に痛烈なライナーが直撃。これを拾った投手が一塁に送球も判定はセーフ。審判は石ころでは?

 

走者一、二塁なので、塁審は投手板と二塁ベースの間に立っています。そこに打者の痛烈なライナーが飛び、塁審が避ける間もなく体にボールが直撃しました。投手は跳ね返って足元に転がってきたボールを拾い、打者が一塁に到達するよりも早く一塁へと送球しました。打者走者はアウトと思い、ダグアウトへと戻りかけましたが、球審は一塁セーフの判定です。審判は「石ころと同じ」と理解していましたが、なぜアウトではなくセーフなのでしょうか。

 この場合、記録上は『安打』で、一塁はセーフなのです。「審判は石ころと同じ」といっても、それは内野手の後方に立っているときに、打球に当たった場合です。規則5.05は打者に安全に一塁が与えられるケースを述べていますが、その(b)の(4)にはこうあります。

「野手(投手を含む)に触れていないフェアボールが、フェア地域で審判員または走者に触れた場合」とあります。これには続きがあって

「ただし、内野手(投手を除く)をいったん通過するか、または野手(投手を含む)に触れたフェアボールが審判員に触れた場合にはボールインプレイである」

 と記されています。審判に打球が当たっても、ボールインプレー、つまり石ころと同じ扱いで成り行きまかせというのは、この5.05(b)(4)の続きの場合なのです。

 滅多にないプレーですが、1978年4月22日の日本ハム-近鉄戦[後楽園球場]でこんなプレーがありました。6回表に近鉄の羽田耕一は一塁線を抜く二塁打性の当たりを打ちましたが、一塁ベース後方のライン上の塁審に当たって二塁手の前に反転したために、二塁へ進むことはできませんでした。

 気の毒ですが、規則に定められているので、あきらめるしかありません。
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元日本野球規則委員・千葉功による野球ルールコラム。

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