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よく分かる!ルール教室 / 元日本野球規則委員 千葉功

指名打者に偵察要員を起用。その選手の最初の打席で交代を伝えたが、球審に認められなかったのはなぜ?

 

偵察要員として指名打者の欄に記載した選手を、その選手の打順が最初に回って来た際に交代させようと、攻撃側の監督が球審にその旨、伝えましたが、交代が認められません。なぜでしょうか。

 おそらく、相手の先発投手がまだマウンドにいたからだと考えられます。野球規則には指名打者についても細かく定められていて、5.11(a)の(2)に

「試合開始前に交換された打順表に記載された指名打者は、相手チームの先発投手に対して、少なくとも1度は、打撃を完了しなければ交代できない。ただし、その先発投手が交代した時は、その必要はない」

 とあります。問のケースでは「最初に回って来た際に」とありますので、相手先発が続投していて、その指名打者に打席に立つ義務が残っていたのでしょう。

 プロ野球でもこの規則を知らずに、偵察要員として投手を指名打者に置いてメンバー表を提出し、結果、その投手が打席に立たなければならなくなったケースがあります。

 2011年の5月20日のオリックス-広島戦(京セラドーム大阪)でのことです。広島の野村謙二郎監督(当時)は「七番・指名打者」に高卒2年目だった投手の今村猛を起用しました。当時はまだ、セ・リーグでは予告先発も導入されていない時期(パでは2006年から、セでは翌12年からレギュラーシーズン全試合で採用)で、当時は交流戦でも予告先発はありませんでした。野村監督は偵察要員のつもりだったのでしょう。メンバー表交換時に当時のオリックス・岡田彰布監督に指摘され、気付いたそうです。

 結局、今村は2回表一死一塁の場面で打順が回り、オリックスの先発・木佐貫洋から送りバントを決め、5回の第2打席で代打(石井琢朗)が送られ、お役御免となりました。野村監督は反省しきりだったようです。[文責=編集部]
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元日本野球規則委員・千葉功による野球ルールコラム。

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