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よく分かる!ルール教室 / 元日本野球規則委員 千葉功

ワイルドピッチしたボールが突如現れた別のボールと入れ替わった場合、その後のプレーはどのような扱いになる?

 

走者一、二塁のケースで投手が暴投をしましたが、振り返った捕手が球審と激突。その弾みに球審のボール袋から複数の新球が転がり落ち、その1つを試合球と勘違いした捕手がこれを拾って本塁突入を試みた二塁走者にタッチしました。この場合の判定はどうなりますか?

 非常に珍しいのですが、実際に起こったプレーです。

 2013年の夏の高校野球(第95回大会)の奈良大会の3回戦、天理高対奈良大付高の1回二死一、二塁の場面でした。奈良大付高の投手が暴投をし、捕手が後ろに逸らしたボールを追うために振り返ったところ、球審と衝突。球審の腰にぶら下げていたボール袋から「新球」が転がり落ちました。実際に暴投となったボールはバックネットのあたりを転々としていたために、これを見ていた天理高の二塁走者は三塁を蹴り、迷うことなく本塁突入を試みます。

 ところが奈良大付高の捕手は球審のボール袋から転がった新球を、投手が投じたボールと勘違いし、これを拾い上げて本塁生還を狙う走者にタッチしました。一般的に考えれば、走者の生還は認められそうですが、このとき、球審も正規のボールを見失っており、審判団が協議をした結果、得点は認められず、1つずつの進塁のみを認めて二死二、三塁から試合は再開されました。結局、この回、天理高は無得点に終わっています。

 このとき適用された規則は、審判員の資格と権限が記された8.01(C)であると考えられます。ここには

「審判員は、本規則に明確に規定されていない事項に関しては、自己の裁量に基づいて裁定を下す権能が与えられている」

 と明記されており、想定外のプレーが起きた場合に、適用されるものです。そのほかの審判員は暴投したボールの行き先が見えていたはずですが、審判団の協議の末の判定ですから、総合的な判断だったのでしょう。[文責=編集部]
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元日本野球規則委員・千葉功による野球ルールコラム。

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