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よく分かる!ルール教室 / 元日本野球規則委員 千葉功

日本のプロ野球では当たり前のように行なわれてきた試合中のベンチ前でのキャッチボールは規則の厳格適用で禁止されることになる?

 

今年の1月に行われたプロ、アマ合同野球規則委員会では「申告敬遠制の採用」や、「反則投球に関連する項目の削除」などに注目が集まり、実際に今季のプロ野球でこれら新たなルールが適用され、話題となっています。同じタイミングで「ベンチ前のキャッチボールの禁止」についても議題に上がったはずですが、どうなりましたか?

 味方チームの攻撃中、一死もしくは二死になると、その攻撃側チームの投手がベンチ前に出て、キャッチボールを行うのが、NPBでは当たり前になっていますが、実はこれ、野球規則違反です。

 プレーヤーの交代について書かれた規則5.10(k)には

「両チームのプレーヤー及び控えのプレーヤーは、実際に競技にたずさわっているか、競技に出る準備をしているか、あるいは一塁または三塁のベースコーチに出ている場合を除いて、そのチームのベンチに入っていなければならない(以下略)」

 とあります。ここでいう「競技に出る準備をしている」という選手は、この後に交代での出場を通告された選手のことで、すでに出場している選手は「ベンチに入っていなければならない」のです。

 つまり、これまで投手のベンチ前でのキャッチボールは、規則違反であるにもかかわらず、見逃されて(許されて)きたということです。

 今年1月の規則委員会を含め、これまで幾度も規則5.10(k)の順守について議題に上がりましたが、ウォーミングアップによるケガ防止などで選手は必要性を訴えており、今回も厳格な適用は見送られています。

 MLBでは順守されており、「国際基準に合わせるため」を理由に厳格化を目指すのは、侍ジャパンが金メダルを目指す2020年の東京五輪や、翌21年に開催予定の第5回WBCでは注意を受けるからですが、4年に1度の大会と、毎日の選手のケガ防止と、果たしてどちらに重きを置くべきなのでしょうか。[文責=編集部]
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元日本野球規則委員・千葉功による野球ルールコラム。

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