5月15日の巨人対阪神(東京ドーム)の4回裏、二死三塁から打席の菅野智之選手が中前に抜けようかという当たりを放ちましたが、阪神の遊撃手・木浪聖也選手が横っ飛びで好捕し、すぐに起き上がって一塁へ送球しました。菅野選手も全力疾走です。菅野選手が一塁キャンバスを踏むのと、一塁手のマルテ選手のミットに送球が入るのがほぼ同時に見えましたが、一塁塁審の判定はアウト。原辰徳監督がリクエストを行い、リプレイ検証の結果、セーフと判定が覆りました。「同時はセーフ」ということでしょうか？

　結論から言うと、このようなケースでの“同時”はセーフです。ただし、野球規則には「同時はセーフ」というような表現はどこにも書かれていません。昭和30年代の規則書には日本でのみの注として「同時はセーフである」と記述がありましたが、現在は消えています。

「同時はセーフ」となる根拠ですが、これは“打者アウト”を定めた5.09(a)(11)です。ここには「打者が第3ストライクの宣告を受けた後、またはフェアボールを打った後、一塁を触れる前に、その身体または一塁に触球された場合」とあり、打者が一塁に触れる前に触球されたらアウトなのですから、同時またはその後に触球されたらアウトではないと逆説的に解釈ができ、そこから同時はセーフと判断することができるのです。

　今回のケースでは「同時セーフ」の判定がなされたと推測できますが、もう1つ、一塁手の完全捕球が後だったことが確認されたとも考えられます。というのも、マルテ選手のミットに送球が入るのと菅野選手の触塁が同時ではありましたが、マルテ選手がミットを閉じたのがその直後に見えました。同規則【注】には打者をアウトにするには守備側は触塁時に「確実にボールを保持していなければならない」とあり、マルテ選手が送球を確実に捕らえたとはいえないとリプレイ検証の末に判断された可能性もあります。[文責=編集部]