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よく分かる!ルール教室 / 元日本野球規則委員 千葉功

メジャー通算388試合登板で21勝4S89Hの田澤純一選手がNPB入りできない“田澤ルール”とは?

 

レッドソックスで活躍し、昨季はカブス傘下、レッズ傘下でプレーした田澤純一選手が帰国、7月12日にBCLの武蔵ヒートベアーズと契約を結びました[デビュー済]。これだけキャリアがあり、しかも34歳と働き盛りなのに、NPB球団とは“田澤ルール”があって契約を結べないと聞きました。“田澤ルール”とはなんですか?

“田澤ルール”とは、公認野球規則に定められたものではなく、NPBが独自に定めたもので、「日本のドラフトを拒否して海外の球団と契約した選手は、(海外の球団を)退団後も一定期間(社会人・大卒なら2年間、高卒なら3年間)はNPBのチームと契約できない」としたルールです。

 2008年、新日本石油ENEOSで活躍し、この秋のドラフト上位指名候補だった田澤選手が、MLBへの挑戦を希望し、ドラフト会議前に12球団に指名を見送るよう求めた文書を送付しました。従来、NPBとMLBの間には、互いの国のドラフト候補選手とは交渉しないという紳士協定がありましたが、このケースでは選手本人がメジャー挑戦を希望しており、これを阻害することは職業選択の自由に反するため、例外として認められました。ただし、一方では田澤選手に続いて有力アマ選手が直接MLBを志望することで、ドラフト制度の崩壊を懸念する声が挙がった結果、NPBと12球団が申し合わせ、「有力なアマチュア選手の海外流出を防止する」ためのルールが設けられました。ネーミングは田澤選手の一件があったことでできたルールのため、広くこう呼ばれています。

 ルール制定から12年がたち、この間、プロ野球選手会は、野球選手の経済活動を著しく制限し、独占禁止法上も問題だとして、このルールの撤廃を求めてきましたが、8月5日、オンラインで行われたNPBとの事務折衝であらためて撤廃を申し入れたところ、NPB側は「今後、協議する」と回答したということです。必然の流れではないでしょうか。[文責=編集部]
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元日本野球規則委員・千葉功による野球ルールコラム。

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