9月23日のソフトバンク対オリックス(PayPayドーム)でのことです。5回裏のソフトバンクの攻撃は二死一、二塁で打席にグラシアル選手です。オリックスの田嶋大樹選手が4球目を投げようとしたときに、グラシアル選手がタイムを要求します。その様子を見た田嶋選手はモーションに入っていましたが、投げずに動きを中断しました。塁審からボークの宣告があり、一、二塁の走者は進塁しかけましたが、森健次郎球審が審判団を集め、元の状況に戻しました。「打者が打撃姿勢をやめたので、投球を中断した。双方がルール違反を犯しているので、元に戻して再開します」と場内説明がありましたが、どういうことでしょうか。 田嶋大樹選手はモーションを中断しているのですから、一見するとボークで走者がそれぞれ進塁でよさそうですが、問題は森健次郎球審の言う「双方がルール違反を犯した」点にあります。このとき、セットポジションに入った田嶋選手の間合いの長さを嫌ったグラシアル選手が右手を上げて球審にタイムを要求、その後、打撃姿勢をやめていますが、これが野球規則5.04(b)(2)に定められる規則違反に当たります(詳細は割愛)。このとき、森球審も当然のようにタイムを認めることはありませんでした。
同規則の【原注】には
「(前略)走者が塁にいるとき、投手がワインドアップを始めたり、セットポジションをとった後、打者が打者席から出たり、打撃姿勢をやめたのにつられて投球を果たさなかった場合、審判員はボークを宣告してはならない。投手と打者との両者が規則違反をしているので、審判員はタイムを宣告して、投手も打者もあらためて“出発点”からやり直させる」とあり、森球審はこれに沿って「元の状況に戻して再開」と決断を下した、ということです。なお、セットに入った後は投手が優先されます。タイムもかかっていないのに投球を中断した田嶋選手の凡ミスで、コーチに注意を受けたのではないでしょうか。[文責=編集部]