二死走者一塁です。投手は打者に投球をしましたが、セットポジションの完全静止がなされていないとして、「ボーク」が宣告されました。しかし、一塁走者は投球と同時にスタートを切っており、カウントは3ボール2ストライクで、打者は投球を空振り、捕手がこれを後逸したため、一塁走者は三塁に到達し、打者走者は振り逃げで一塁へと向かいます。この際、捕手が後逸したボールを拾い上げ、打者走者が一塁ベースを駆け抜ける前に一塁へ送球しました。この場合、打者走者はアウトになるのでしょうか。

　そもそもボークが宣告されているのに、プレーが続けられることがあるのか？　と疑問に思う方もいると思いますが、結論から言うと、あり得ます。ボークが宣告されても攻撃側にボークを選択するよりも、より有利な状況になる可能性がある場合、(ボールイン)プレーが続けられるケースが考えられます。

　その上で、プレーを続けた結果、ボークのルールを適用する場合と、攻撃側がより有利な結果を得たために、ボークのルールを適用せず、そのままボールインプレーにしておく場合の両方があります。

　まずはボークがなかったことになるケースですが、公認野球規則6.02(a)のボークの“ペナルティ”の項目にこのような記述があります。

「(a)項各規定によってボークが宣告されたときは、ボールデッドとなり、各走者は、アウトにされるおそれなく、1個の塁が与えられる。ただし、ボークにもかかわらず、打者が安打、失策、四球、死球、その他で一塁に達し、かつ、他のすべての走者が少なくとも1個の塁を進んだときには、このペナルティの前段を適用しないで、プレイはボークと関係なく続けられる」

　今回のケースでは打者走者が一塁でアウトとなっていますので、ボークのペナルティーを適用し、打者はカウント3ボール2ストライクから打ち直し、三塁まで進んだ一塁走者は二塁に戻してプレーを再開することとなります。[文責=編集部]