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よく分かる!ルール教室 / 元日本野球規則委員 千葉功

両打ちの打者が同一打席内で右打席と左打席を入れ替えるのはルール上、問題ない?

 

全日本大学野球選手権の1回戦、東亜大-大商大の試合(6月7日、東京ドーム)でのことです。両打ち登録の東亜大の五番打者・中内洋介選手(3年・明豊高)が2回に大商大の先発左腕・花村凌選手(4年・神戸国際大付高)に対し、最初は左打席に立ちましたが、3球目から右打席に移りました。結果は7球目に左飛でしたが、打席を入れ替えることはルール上、問題ないのでしょうか。

 結論から言うと、規則上はまったく問題ありません。中内選手は相手の投手を揺さぶるために打席を入れ替えた旨、試合後に明かしています。

 両打ちの打者はこれで構いませんが、両投げの投手に関してはそうはいきません。“両手投げ投手”について定めた野球規則5.07(f)には「投手は、球審、打者及び走者に、投手板に触れる際、どちらかの手にグラブをはめることで、投球する手を明らかにしなければならない。投手は、打者がアウトになるか走者になるか、攻守交替になるか、打者に代打者が出るか、あるいは投手が負傷するまでは、投球する手を変えることはできない(後略)」とあります。実はこの規則、比較的に新しいもので、きっかけは2008年のマイナー・リーグの試合にありました。

 ヤンキース傘下の1Aスタテンアイランドの両投げ投手・ベンディットと、メッツ傘下ブルックリンの両打ち・エンリケスが対戦。エンリケスが左打席に入ると、ベンディットが両投げ用の特注グラブを右手にはめ(つまり左投げ)、それを見たエンリケスが右打席に移動。するとベンディットがグラブを左にはめ(つまり右投げ)、今度はエンリケスが左打席に移動します。これを5分間も延々と繰り返したため、見かねた球審が打者に打席を選択するよう指示。右対右の対決となり、最終的に、ベンディットが三振を奪いました。これがきっかけとなり、5.07(f)※当時は8.01(f)が誕生することとなります。[文責=編集部]
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元日本野球規則委員・千葉功による野球ルールコラム。

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