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よく分かる!ルール教室 / 元日本野球規則委員 千葉功

MLB機構が投手による禁止物質使用の取り締まり強化を通達。規則上はどのように定められていた?

 

MLB機構が投手による禁止物質使用の取り締まりを厳格化することを各球団に通達したというニュースを見ました。そもそも規則上はどのように定められているのですか。

「取り締まりを強化する」とあるように、もともと投手がボールや手、指にいかなる異物(使用が認められているロジンバッグを除く)もつけてはならないことが規則では定められています。しかし、MLBの使用球が滑りやすいために、対応策としてグリップ力を高める物質(松ヤニや日焼け止めクリームなど)を使用する選手が存在し、あからさまでない限り、これが黙認されていました。

 しかし、滑り止めの用途以外に、ボールの回転数を上げたり、変化球のキレに影響をもたらす目的で、度を超えた使用が目立ってきたために、MLB機構が取り締まりに乗り出した、というのが今回の経緯です。その背景にはリーグ全体の打率の低下なども挙げられていますが、真意は定かではありません。

 これらの「ルール」は“投手の禁止事項”について触れた野球規則6.02(c)に明記されており、例えば(1)には
「投手が投手板を囲む18フィートの円い場所の中で、投球する手を口または唇につけた後にボールに触れるか、投手板に触れているときに投球する手を口または唇につけること」
も禁止されています。このほかにはボールに対し(2)唾液をつけること、(3)身体や着衣で摩擦すること、(4)異物をつけること、(5)傷つけること、(6)=(2)〜(5)で規定された方法で傷つけたボールを投げることが禁止されています。同時に(7)「投手がいかなる異物でも、身体につけたり、所持すること」も禁止されており、これらに違反した場合、ボールの交換や「ボールの宣告」などのペナルティが課されることも定められています。

 規則に定められたものとは別に、MLB機構は取り締まりが厳格化された後、チェックを受けて禁止物質の使用が発覚した場合、自動的にその投手に10日間の出場停止処分などの厳しいペナルティも検討しているようです。[文責=編集部]
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元日本野球規則委員・千葉功による野球ルールコラム。

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