週刊ベースボールONLINE

山崎夏生のルール教室

高校野球でのトラブル 30分間の試合中断はなぜ起きた/元パ・リーグ審判員 山崎夏生に聞く

 

どんなカテゴリーであっても正しいルール理解は必須[写真はイメージ]


先月、ある県の高校野球春季大会で宣告に対する質問のため試合が30分間も中断するというトラブルがありました。状況は二死一、二塁から打者が投手を急襲する打球を放ち、それがグラブに弾かれセカンド方向に転がります。その打球処理に動いた二塁手と一塁走者が接触してしまったのです。審判団は2分ほど協議をし、守備妨害を宣告しました。審判団のルール処置は間違いないとは思うのですが、なぜこんなに時間がかかったのでしょうか? 動画を添付しますのでご検証ください。

 読者からこのような質問が届きました。このルール適用で間違いありません。守備優先は野球の大原則です。これは公認野球規則の「5.09(b)走者アウト(3)走者が、送球を故意に妨げた場合、または打球を処理しようとしている野手の妨げとなった場合」と「6.01(b)守備側の権利優先」に明記されています。

 ただし、こうしたルールもあります。打者または走者の妨害の項に「6.01(a)(11)(A)いったん内野手(投手を含む)に触れたフェアボールに触れた場合(B)1人の内野手(投手を除く)に触れないでその股間または側方を通過したフェアボールに、すぐその後方で触れても、この打球に対して、ほかのいずれの内野手も守備する機会がない場合には、審判員は走者が打球に触れたという理由でアウトを宣告してはならない。」とあります。このルールにある打球と守備者の区別を攻撃側チームは勘違いしたのではないかと推察します。

 動画を見ますと、審判団はルールの再確認をしてから場内放送で説明し、試合再開を促しました。ところがそこから攻撃側のキャプテンが再三再四どころか、10回も監督の指示を受け、審判団や大会本部への質問(抗議ではありません)に出向いたのです。

 さすがに30分間の試合中断は異例の事態です。一つは高校野球では監督がフィールド内に入り直接に質問ができないため、このようにキャプテンが伝令役となって行き来すること。もう一つはきちんと正しいルール適用をしているのに、なぜそれを素直に受け入れないのか、ということ。これは指導者のルールの勉強不足に起因しています。プロ野球では5分以上の抗議は自動的に退場となる内規があります。これだけ丁寧に説明しても納得できないならば遅延行為として警告を発し、最悪の場合にはアマチュアの監督であっても退場を命じても良いのではないでしょうか。「学生野球は教育活動の一環」という学生野球憲章の理念にも反しますから。

PROFILE
やまざき・なつお●1955年生まれ。新潟県上越市出身。高田高を経て北海道大に進学。野球部でプレーした。卒業後は日刊スポーツ新聞社・東京本社に入社するも野球現場へのあこがれから、プロ野球審判としてグラウンドに立つことを決意。82年にパ・リーグ審判員として採用され、以後29年間で一軍公式戦1451戦に出場。2010年の引退後はNPBの審判技術委員として後進の指導にあたった。現在は講演、執筆活動を中心に活躍する。
よく分かる!ルール教室

よく分かる!ルール教室

元日本野球規則委員・千葉功による野球ルールコラム。

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング