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山崎夏生のルール教室

プロ審判員になるには? 球史の生き証人を目指すあなたへ/元パ・リーグ審判員 山崎夏生に聞く

 

2013年の第1回NPBアンパイアスクールでの集合写真。筆者も企画立案、運営に携わった


広島県に住む高校3年生の元高校球児です。卒業後は大学に進学し、まずは所属の大学野球連盟の学生審判員になり、ここでじっくりと腕を磨いてから将来的にはプロ野球の審判になりたいと思っています。採用試験はどのようにして行われるのでしょうか?

 かつてはプロ審判員になる方法は3つありました。

[1]元プロ野球選手が引退後に球団からの推薦で入る。
[2]アマチュア審判として実績を積み、その連盟からの推薦で入る。
[3]一般公募でのテスト採用。

 現在はこのいずれの道もありません。あるのはただ一つ、毎年12月中旬に行われるNPBアンパイアスクールで、優秀な成績を修めるのみです。このスクールは2013年に開校され、すでに1期生や2期生が一軍公式戦でのデビューも果たしています。なお今季のNPB現役審判53名中19名がスクール修了生です。

 毎年応募は130〜160名くらいありますが、条件は高卒見込みの17歳以上で、男女や年齢制限はありません。しかし一軍昇格までに10年近くはかかりますので、やはり20代前半までが望ましいでしょう。一次書類選考で60名ほどに絞り込まれ、ロッテ浦和球場にて6泊7日で行われます。朝9時から夕方4時までは実践講習、夕食後は2時間の座学とルールテスト、最終日には2人一組でのキャンプゲームという難プレーがてんこ盛りの実技テストが課せられ、その成績優秀者数名が研修審判員として採用されます。

 まずは独立リーグに派遣され、ここで見込みありと認められればNPB育成審判として契約。ここからまた数年の二軍戦での修業を積み、本契約となれば一軍への出場資格を得ることができます。ここに至るまでに最低でも5〜6年はかかりますし、給与面でも決して、恵まれているとは言い難いでしょう。とはいえ、それ以上の喜びのあるのがこの仕事です。時代を代表するトッププレーヤーの攻守走、そして球史の生き証人ともなれる現場に立てるからです。

 審判は150キロのボールを投げたり打ったりするわけじゃなく、「見る」のが仕事ですから一定水準の運動能力と動体視力があれば誰でもできます。一番の条件は何があろうともめげない強い心と、野球を愛する心を持っていること。そして現場からもファンからも愛され、尊敬される豊かな人間性です。まずは大学生として幅広い教養を身に付け、強靭な肉体を作り上げてください。これが当面の必修科目です。

PROFILE
やまざき・なつお●1955年生まれ。新潟県上越市出身。高田高を経て北海道大に進学。野球部でプレーした。卒業後は日刊スポーツ新聞社・東京本社に入社するも野球現場へのあこがれから、プロ野球審判としてグラウンドに立つことを決意。82年にパ・リーグ審判員として採用され、以後29年間で一軍公式戦1451戦に出場。2010年の引退後はNPBの審判技術委員として後進の指導にあたった。現在は講演、執筆活動を中心に活躍する。
よく分かる!ルール教室

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元日本野球規則委員・千葉功による野球ルールコラム。

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