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山崎夏生のルール教室

足が邪魔で帰塁できない! 走塁妨害の判断は故意か否かが焦点/元パ・リーグ審判員 山崎夏生に聞く

 

二走のラミレス[中央]は判定にこの表情。塁審は故意ではないとジャッジを下したようだ[写真=Getty Images]


【問】現地時間5月13日、大谷翔平選手の所属するエンゼルスとガーディアンズの試合でこんなプレーがありました。無死一、二塁から投手が二塁へけん制。タイミングはセーフなのに、塁審の判定はアウト。リプレイ映像をよく見ると、遊撃手のザック・ネトの右足が二塁ベースの前に入り、帰塁する走者の手をブロックしていたため触塁できなかったのです。これは走塁妨害にならないのでしょうか?

【答】早速、動画を確認してみました。二塁走者のホセ・ラミレスは「なぜだ?」という表情で憮然(ぶぜん)としていますが、攻撃側監督からのチャレンジ(リクエスト)の要請もなく、アウトのままでした。当該審判はこのプレーは自然の流れの中で起きたことであり、故意ではないのでナッシング(成り行き)と判断したのでしょう。

 もしもこれが、帰塁のために伸ばす手をブロックしようという明らかな意図が感じられたならば当然、走塁妨害となります。この規則は進塁時のみならず帰塁時にも適用され、このケースですと走者に対して直接プレーが行われています。よって6.01(h)(1)によりボールデッドとなって、少なくとも1個の安全進塁権が与えられます。ほかの塁上の各走者はもしもこのプレーがなければ達しただろうと推定される塁へ進むことができます。

 さて、これが一塁の場合だったらどうか? 例えばけん制球が高かったため一塁手が飛び上がり、その着地した足が偶然にも帰塁する一塁走者の手をブロックしたといったケースでしたら、質問のケースと同様にナッシングでしょう。しかし、最初から塁をふさぐように足を置いていたならばいけません。通常はそのような置き方はしませんし、故意だとみなされます。

 もう6年ほど前の話ですが、ある外国人選手が頻繁にこのような足の置き方をして、問題になったことがあります。30センチ以上もある大きな足で塁の半分以上を覆い隠してしまうのです。幸いアウトになったケースはありませんでしたが、審判団から厳重に注意をして改めさせました。MLBですとこの点は厳しく、即刻に走塁妨害を宣告されます。

 また同じく帰塁時に伸ばした手や足が野手のタッグに払われて触塁できないこともあります。これもナッシングとみなされるのが通常ですが、すでに触塁している場合はタイムをかけてアウトにはしません。タッグの勢いに押されてやむなく離塁してしまったからです。要はこういった類のプレーは、故意性があったか否かの判断が重要なのです。

PROFILE
やまざき・なつお●1955年生まれ。新潟県上越市出身。高田高を経て北海道大に進学。野球部でプレーした。卒業後は日刊スポーツ新聞社・東京本社に入社するも野球現場へのあこがれから、プロ野球審判としてグラウンドに立つことを決意。82年にパ・リーグ審判員として採用され、以後29年間で一軍公式戦1451戦に出場。2010年の引退後はNPBの審判技術委員として後進の指導にあたった。現在は講演、執筆活動を中心に活躍する。
よく分かる!ルール教室

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元日本野球規則委員・千葉功による野球ルールコラム。

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