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山崎夏生のルール教室

珍しいダブルリクエスト なぜそれぞれ違う審判が判定?/元パ・リーグ審判員 山崎夏生に聞く

 

リプレイ検証の判定は、当該審判は行わない。そのため異なる審判員が判定を行うケースもある


【問】6月30日のロッテ楽天戦(ZOZOマリン)で、1つのプレーに両チームからリクエストという珍しいシーンがありました。6回表の楽天の攻撃で一死一塁から投ゴロとなり、二塁への送球はセーフ。そこから一塁へ転送され打者走者はアウト。これに対しロッテ・吉井理人監督は二塁の判定、楽天・石井一久監督は一塁の判定に同時にリクエストをしたのです。長いリプレイ検証の結果、最終判定を下したのは別々の審判でした。なぜでしょう?

【答】この試合は現場で観戦していました。スタンドも「?」という雰囲気でしたね。まずはリクエストの検証システムについて説明いたします。

 通常は審判員全体の中で7人いるクルーチーフという役職者が責任審判として各試合に配置されます。とはいえ、彼らも球審翌日は控え審判となりフィールド内には居ませんから、その場合はキャリア最上位のものが責任審判となります。で、リクエストがあった場合には一番若い審判がフィールド内に残ります。審判は試合の管理者ですから、必ずや両チームや観衆に不穏な動きや気配などがないよう注視しなければなりません。

 リプレイ検証には当該審判は立ち合いません。それは、彼の判定はすでに下されているからです。よってフィールド内に居たもう2人と控え審判の3人で検証を行います。その映像は以前にも当欄で書いたように中継テレビ局からのもので、スタンドで流されるものと同じです。その映像から判定を覆すに足る絶対的な瞬間があれば判定変更、なければ当初の判定どおりとなります。

 ただし、当該審判に意見を求めることもあります。それは映像にはない事実、例えば野手や走者のブラインドになり映っていないタッグや触塁、現場での音などの情報があったのかどうか、というケースです。

 その最終判定をフィールド内で明示するのが責任審判なのですが、前述のようにクルーチーフが控え審判だったり、リクエストの当該審判だったりした場合はキャリア最上位のものが代行します。この試合の場合ですとクルーチーフは控え審判でした。フィールドには若手の三塁審判が居残る形になりました。で、当日の責任審判は一塁でしたので、二塁のリクエストに対しては一塁審判が、一塁のリクエストに対しては二塁の審判が最終判定を行った、ということなのです。こういった分かりにくいシステムにも改善の余地がありそうですね。

PROFILE
やまざき・なつお●1955年生まれ。新潟県上越市出身。高田高を経て北海道大に進学。野球部でプレーした。卒業後は日刊スポーツ新聞社・東京本社に入社するも野球現場へのあこがれから、プロ野球審判としてグラウンドに立つことを決意。82年にパ・リーグ審判員として採用され、以後29年間で一軍公式戦1451戦に出場。2010年の引退後はNPBの審判技術委員として後進の指導にあたった。現在は講演、執筆活動を中心に活躍する。
よく分かる!ルール教室

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元日本野球規則委員・千葉功による野球ルールコラム。

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