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山崎夏生のルール教室

ボールをこぼしていても守備妨害? 焦点は守備機会が残っているか否か/元パ・リーグ審判員 山崎夏生に聞く

 

プロ野球でも野手、走者と打球が絡み守備妨害となるケースは多い[写真は6月25日の中日ヤクルト戦=バンテリン]


【問】夏の甲子園を目指す千葉大会のある試合でタイブレークとなりました。そして11回裏無死一、二塁から打者はセカンドゴロを打ちました。二塁手はその打球をはじき、捕りにいったところで一塁走者と接触しました。二塁審判は瞬時にタイムをかけ、一塁走者を指さしアウトを宣告。その後、三塁に到達していた二塁走者を戻し、打者走者には一塁を与え一死一、二塁での再開となりました。この処置でよかったのでしょうか? 確認のためになんと15分もの中断となったのですが……。

【答】このシーンはちょうどテレビで観ていました。非常に難しいプレーでしたが見事なジャッジでした。まず野手と走者が接触したならば守備妨害か走塁妨害かのどちらかです。特例として本塁近辺の打球処理をする捕手と打者走者の接触、あるいは送球を受ける直前の野手と塁に駆け込む走者の接触の場合のみナッシング(成り行き)となります。

 で、守備妨害となるのは「走者が、送球を故意に妨げた場合、または打球を処理しようとしている野手の妨げとなった場合」(5.09b.3)です。

 同項目の【注1】には打球処理の定義が「野手が打球に対して守備しはじめてから打球をつかんで送球し終わるまでの行為をいう」とあります。ここで問題なのが質問のように野手がはじいた場合です。まだ1歩動けば、あるいは手を伸ばせば再捕球できる(1ステップ1リーチ)状態ならば守備機会は残っている、とみなされます。このケースですと十分にその範囲内でしたから妥当な判定でした。また、その妨害が併殺打を防ぐための故意のものだとみなされれば打者走者もアウトになります。

 これが逆に走塁妨害となるのは打球を大きくはじき、守備機会を失っていたり、その打球をカバーに入ったほかの野手が処理しているときに、はじいた野手と走者が接触した場合です。つまり野手が守備機会を失っていたならば守備優先ではなく、逆に走者優先となるのです。

 この判定に対して攻撃側キャプテンが審判団に質問をし、その説明を受けたあとに監督に報告し、それに納得のいかぬ監督がまた質問をし、ということが繰り返されました。大切な局面ですから大会本部も慎重を期し、ルールの確認などを徹底的に行ったのだとは思いますが、球審が場内放送をして試合が再開されるまでに15分もかかってしまいました。炎天下で待たされていた守備側選手は特に気の毒でしたね。

PROFILE
やまざき・なつお●1955年生まれ。新潟県上越市出身。高田高を経て北海道大に進学。野球部でプレーした。卒業後は日刊スポーツ新聞社・東京本社に入社するも野球現場へのあこがれから、プロ野球審判としてグラウンドに立つことを決意。82年にパ・リーグ審判員として採用され、以後29年間で一軍公式戦1451戦に出場。2010年の引退後はNPBの審判技術委員として後進の指導にあたった。現在は講演、執筆活動を中心に活躍する。
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元日本野球規則委員・千葉功による野球ルールコラム。

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