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山崎夏生のルール教室

塁を完全にふさいでもアウト? 今回も故意かどうかが焦点に/元パ・リーグ審判員 山崎夏生に聞く

 

現行ルールでは正しいジャッジと言えるプレーだったが、新たなルール運用を模索させるに足るモノであったことも事実だ


【問】8月18日のDeNA阪神(横浜)の9回表に熊谷敬宥選手(阪神)が盗塁を企てセーフとなりましたが、この判定に対しDeNA・三浦大輔監督はリクエストを要求。リプレイ検証の結果はアウトとなりました。送球を受け止めようとしゃがみこんだショート・京田陽太選手(DeNA)の足が完全に二塁ベースを隠しており、走者の足が塁に届いていませんでした。責任審判の場内放送では走塁妨害ではないと説明されましたが、コリジョンルール(ブロックの禁止)は適用されないのですか? また、リプレイ検証の結果に対する抗議は即時に退場のはずですが、岡田彰布監督(阪神)は5分近くも抗議していました。

【答】まず、コリジョンルール(6.01.i・本塁での衝突プレー)は走者・捕手をともに守るためのものであり、本塁でしか適用されません。原則的にほかの塁近辺では送球を受ける野手と塁に駆け込む走者の接触はナッシング(成り行き)です。ただしそのプレーに故意性があれば守備妨害や走塁妨害となりますが、今回のケースでは捕手からの送球がワンバウンドになったため、塁の前でしゃがみこんで捕球した精一杯のプレーとみなされたわけです。これは以前に当欄(6月19日号)で取り上げたけん制球時に帰塁する走者の手を野手が偶然にも足でふさいでしまったケースなどと同様です。

 本来ですと、リプレイ検証の結果はアクションで示すのみですが、今回は映像からして故意の走塁妨害ではないのかと疑念を持たれると判断し、場内放送での説明を加えたのだと思います。ですから岡田監督も結果に対する抗議ではなく、なぜ走塁妨害ではないのかという質問だと審判団は受け止めたのでしょう。

 翌日、阪神球団は結果的にこのように完全に塁がふさがれた場合には故意でなかろうとも走塁妨害を適用すべきではないか、との意見書をNPBに提出しました。これに対しセ・リーグの杵渕和秀統括は現行のルールでは正しいジャッジではあるけれど、触塁の場がなかったためのアウトという事実、その不利益を取り除くことも必要だろうとの回答を示しました。

 その結果、9月4日に行われたNPB理事会・実行委員会で森健次郎審判長からこうした不可抗力による走塁妨害では「ブロッキングベース」とし、アウトにはしないという説明がなされました。ただしこれはあくまでもNPBでは、という運用変更であり規則改正ではありません。この点はお間違いのないように。

PROFILE
やまざき・なつお●1955年生まれ。新潟県上越市出身。高田高を経て北海道大に進学。野球部でプレーした。卒業後は日刊スポーツ新聞社・東京本社に入社するも野球現場へのあこがれから、プロ野球審判としてグラウンドに立つことを決意。82年にパ・リーグ審判員として採用され、以後29年間で一軍公式戦1451戦に出場。2010年の引退後はNPBの審判技術委員として後進の指導にあたった。現在は講演、執筆活動を中心に活躍する。
よく分かる!ルール教室

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元日本野球規則委員・千葉功による野球ルールコラム。

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