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山崎夏生のルール教室

国際基準に適応した侍ジャパン プレーでもマナーでも世界一を/元パ・リーグ審判員 山崎夏生に聞く

 

現役選手、コーチとしてともに国際経験豊かな井端弘和監督は、若い選手たちに国際大会でのふるまいを伝えてくれるだろう


【問】3月の第5回WBCに引き続き、11月16日からは久しぶりにアジアプロ野球チャンピオンシップが開催されます。ほかにも今年はU-18代表や女子野球ワールドカップなども行われ、こういった国際試合はワクワクしますが、その際によく話題になるのが「国際試合の難しさ」です。具体的にはどういったことなのでしょうか?

【答】まずよく言われるのがボールの違い。ほとんどの国際大会はWBSC(世界野球ソフトボール連盟)の主催で、その公認試合球は日本のメーカーであるSSK社製です。よって今大会も問題はないでしょう。ちなみにMLB主催のWBCではローリングス社製であり、これはやや重く感じられて滑りやすく、対応に苦しむ選手もいたようです。

 ルール(内規)に関しては大会要項に従うしかありません。コールド規定やタイブレーク、DH制、投球数制限等々がありますが、いずれも両チームともに条件は同じ。ストライクゾーンに関しても必ず他国の球審が務めるわけですから、大会前半の早い段階でその特徴をつかむことが肝心です。代表選手たちは幼いころからあらゆるカテゴリーでの試合を経験していますので、それほどの戸惑いもないとは思いますが……。

 最大の問題は知られざるマナー(アンリトンルール)です。公認野球規則には「してはいけないこと」、つまり禁止事項は書かれていますが、「すべきではないこと」、いわゆるマナーについては一行も書かれていません。この遵守責任はすべてチームに委ねられているのです。これをきっちりと認識していないと親善どころか険悪な結果を招いてしまいます。日本の常識は世界の非常識ともなりえるのです。

 かつての日本代表チームの評判は決して芳しいものではありませんでした。ごく当たり前のように発せられていたベンチからの野次、審判の判定に対するあからさまな不満の態度、捕球時のミットずらし、走者によるサイン盗み、一塁コーチャーのセーフポーズ、挙句の果ての監督の退場等々……。これらのアンリトンルールについては全日本野球協会から発刊されている「野球審判マニュアル・第4版」(ベースボール・マガジン社)に10項目にわたり詳しく書かれていますから、関係者たちは必ず目を通しておくべきです。

 今年のWBSCランキングでは日本は男女ともに世界1位となっています。野球もさることながら、マナーも世界1位だと評価されるような戦いを見せてもらいたいと強く願います。

PROFILE
やまざき・なつお●1955年生まれ。新潟県上越市出身。高田高を経て北海道大に進学。野球部でプレーした。卒業後は日刊スポーツ新聞社・東京本社に入社するも野球現場へのあこがれから、プロ野球審判としてグラウンドに立つことを決意。82年にパ・リーグ審判員として採用され、以後29年間で一軍公式戦1451戦に出場。2010年の引退後はNPBの審判技術委員として後進の指導にあたった。現在は講演、執筆活動を中心に活躍する。

【お詫びと訂正】当初の記事では、世界野球ソフトボール連盟の主催試合の公認試合球はミズノ社製と記載しておりましたが、正しくはSSK社製ですので修正を加えました。関係者、読者の方に大変ご迷惑をおかけしました。ここにお詫びし、訂正させていただきます。
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元日本野球規則委員・千葉功による野球ルールコラム。

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