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山崎夏生のルール教室

よく起こる塁上に2走者 前位の走者がアウトになることも!?/元パ・リーグ審判員 山崎夏生に聞く

 

2人の走者が一つの塁上に立つ場合は、走者は自分で判断せず審判の指示を聞くまで塁上で待機が望ましい


【問】現地時間3月28日のドジャース対カージナルス(ドジャー・スタジアム)。一死一塁から大谷翔平選手がライト線へ痛烈な打球を放ちました。悠々の三塁打と思いきや、その三塁には一塁走者がいたため急停止。結局、二三塁間で挟殺プレーとなり、やむなく進んだ三塁上でアウトになりました。このとき、同一塁上には先に進塁した一塁走者もいたのですが、この場合は必ず後位の走者がアウトになるんですよね?

【答】このプレーは春のセンバツの山梨学院対京都外大西の試合でもありました。このときは一死二、三塁からスクイズプレーを外されて三塁に戻った走者と二塁走者が同一塁に居たケース。プロアマ問わず頻繁に起こるプレーですから、しっかりと整理しておきましょう。

 まず塁上にいる走者は原則的にタッグされてもアウトにはなりません。ですから三本塁間に走者がいれば、いかに後位の走者でもその時点では塁の占有権があります。同一塁上に2人の走者がいた場合にのみ、後位の走者は占有権を失います(5.06.a.2)。

 こういったケースでは審判は混乱を防ぐため、両走者に指差しどちらがアウトでどちらがセーフなのかを明示します。ですから走者は勝手に自分がアウトだと思い込んで離塁せず、審判の指示に従ってください。

 ただし、後位ではなく前位の走者がアウトになる特殊なケースもあります。これは私が現役時代に西武球場(当時)で経験し、冷や汗をかいたプレーです。無死一塁でボテボテのセカンドゴロが飛びました。二塁手は捕球し、目の前を走る一塁走者をタッグアウトしようと試みたのですが、なんとその走者はタッグを避けるために一塁へ戻ってしまったのです。このとき、打者走者はすでに一塁に達しており、一塁上に2人の走者が居たので一塁手は両走者にタッグしましたが、全員が半信半疑の表情。さて、どうするか?

 当然、打者走者はアウトになっていませんから、一塁走者はフォースの状態にあります。であれば一塁での占有権は打者走者にあり、一塁走者は二塁へ進塁しなければなりません。したがって両者にタッグすれば前位である一塁走者がアウトです。

 ただ、もし先に打者走者がアウトになっていれば、その瞬間に一塁走者はフォースの状態ではないので一塁にいてもよいのです。冷静に考えれば分かることですが、それを瞬時に判断する難しさも審判の醍醐味ですね。

PROFILE
やまざき・なつお●1955年生まれ。新潟県上越市出身。高田高を経て北海道大に進学。野球部でプレーした。卒業後は日刊スポーツ新聞社.東京本社に入社するも野球現場へのあこがれから、プロ野球審判としてグラウンドに立つことを決意。82年にパ・リーグ審判員として採用され、以後29年間で一軍公式戦1451戦に出場。2010年の引退後はNPBの審判技術委員として後進の指導にあたった。現在は講演、執筆活動を中心に活躍する。
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元日本野球規則委員・千葉功による野球ルールコラム。

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