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山崎夏生のルール教室

決して起こしてはならない没収試合と防止に向けて/元パ・リーグ審判員 山崎夏生に聞く

 

MLBでは1995年8月10日のドジャース対カージナルス戦が最後の没収試合。ドジャース9回裏の攻撃で三振の判定に監督、コーチが抗議し、退場になったことで観客席からものが投げ込まれ、これをドジャースが制止しなかったことで没収試合となり、審判が宣告した


【問】ゴールデンウイーク中に都市対抗野球大会・神奈川県一次予選準決勝を観に行ったのですが、なんと没収試合に遭遇しました。1回の攻防が終わり、2回表に偵察メンバーでの起用だった七番・DHの打順で、監督は代打を告げました。ところがスタメンDHは投手が代わっていなければ、最低1打席は立たないと交代できないので球審は却下。DHの打者はベンチに入っておらず不在、よって公認野球規則(7.03)に抵触するために没収試合となったのです。どうにもやり切れない結末でした。

【答】パ・リーグ審判になった当時、何があろうとも絶対に没収試合だけはやってはならぬと厳しく言われました。球団には莫大な賠償金と制裁金が科せられますし、監督も審判もクビを覚悟せよと。だからどんなに判定で揉めようとも最低最悪の事態だけは避けるために必死になったものです。

 過去にNPBでは10試合の忌まわしい記録が残されていますが、そのうちの6試合はプロ野球創世期の単純な登録ミスや球場への不着などでした。判定を巡る男と男の意地のぶつかり合いとなっての没収試合の宣告は4度で、「Forfeited Game!」とコールする審判は血涙ほとばしる思いだったでしょう。ちなみに1971年7月の阪急対ロッテ戦が最後の没収試合で、あえて言うならば、たかがハーフスイング1つでの三振でした。

 さて今回のケースですが、これはDH制度のルールを知らなかった攻撃側の監督の責任ですし、審判団が厳格に公認野球規則どおりの適用をしたのも間違いではありません。ただし、アマチュア野球の精神に則ればルール上の誤解や登録選手の単純なる記載ミスなどによる没収試合は極力避けるべき、という考え方があります。それを集約し、2018年と23年の2度にわたり「没収試合防止に向けて」という通達が全日本野球協会から出されています(詳しくはHP参照)。

 その最終項に規定のDH打者不在の場合には「当日のベンチ入りメンバー表に記載されている他の任意の選手に交代させる」とあります。これは内規なのですが、公認野球規則よりも優先されますから、今回の没収試合宣告はいささか早計に過ぎたのではないかと思います。

 やむなきケースとは例えば熱中症や負傷者が続出しスコアボード上に9人の名前がそろわなくなったとき、あるいは悪質な替え玉選手の出場が判明したときなどです。それ以外でしたら最善の方策を探り試合続行させるのが審判団の責任です。

PROFILE
やまざき・なつお●1955年生まれ。新潟県上越市出身。高田高を経て北海道大に進学。野球部でプレーした。卒業後は日刊スポーツ新聞社・東京本社に入社するも野球現場へのあこがれから、プロ野球審判としてグラウンドに立つことを決意。82年にパ・リーグ審判員として採用され、以後29年間で一軍公式戦1451戦に出場。2010年の引退後はNPBの審判技術委員として後進の指導にあたった。現在は講演、執筆活動を中心に活躍する。
よく分かる!ルール教室

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元日本野球規則委員・千葉功による野球ルールコラム。

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