
5月23日のメッツ対ドジャース戦[シティ・フィールド]の4回裏一死、メッツのP.アロンソの右飛で三塁走者のS.マルテがタッグアップ。本塁で憤死とみられたが三塁手のM.マンシーの立ち位置がインターフェアランスとなり得点となった[写真=Getty Images]
【問】5月23日のMLBメッツ対ドジャース戦で、タッチアップを巡る珍しいプレーが立て続けにありました。3回表一死一、二塁からの右中間への打球を中堅手と右翼手が交錯して捕球し損ね、グラブから弾かれました。その落下前に中堅手は捕球したのですが、そのときにスタートし三塁に到達した二塁走者のタッチアップが早かったのではないかとアピールがありました(結果はセーフ)。もう一つは、4回裏一死三塁からのライトフライで三塁走者は本塁憤死したのですが、一転して走塁妨害によりセーフとなりました。三塁手が三塁走者の視界を妨げた、という理由のようです。この二つのプレーについて、解説をお願いします。 【答】まずは用語から。ほとんどの野球関係者は「タッチアップ」「タッチプレー」と言いますが、正確には「タッグアップ」「タッグプレー」ですので、お間違いのないように。
一つ目のプレーは勘違いしている人が多いようですね。チャレンジ(リプレイ検証)を求めた監督もそうだったのでしょう。タッグアップしてよい瞬間とは「捕球」ではなく、
「最初の野手が飛球に触れた瞬間から、塁を離れてさしつかえない」のです(公認野球規則5.09.a.1・原注2)。こうしないと、例えば大きな外野飛球の場合に野手が意図的にジャッグルをしながら前進して来ることができるからです。実際にこういったプレーを企てた前例があったためにできたルールではないかと推察します。もちろん塁審はグラブに触れた瞬間の二塁走者の離塁を見ていたのでセーフと判断しました。
二つ目のプレーはかつてNPBでもよく見られました。タッグアップする走者の視界を意図的に妨げたり、あるいはバントでの進塁を防ぐために意図的に遊撃手が二塁走者の前に立ちはだかったりするような行為です。具体的事例では書かれていませんが、
「審判員はプレイが終了したのを見届けた後に、初めて“タイム”を宣告し、必要とあれば、その判断で走塁妨害によって受けた走者の不利益を取り除くように適宜な処置をとる」(公認野球規則6.01.h.2)と書かれています。つまりこのときの三塁審判は、三塁手がタッグアップを試みる走者と右翼手を結ぶ直線上に立っていたがために視界が遮られてスタートが遅れ、アウトになったのだと判断したのです。こういったアンフェアなプレーを厳しくいさめるナイス
ジャッジでした。
PROFILE やまざき・なつお●1955年生まれ。新潟県上越市出身。高田高を経て北海道大に進学。野球部でプレーした。卒業後は日刊スポーツ新聞社・東京本社に入社するも野球現場へのあこがれから、プロ野球審判としてグラウンドに立つことを決意。82年にパ・リーグ審判員として採用され、以後29年間で一軍公式戦1451戦に出場。2010年の引退後はNPBの審判技術委員として後進の指導にあたった。現在は講演、執筆活動を中心に活躍する。