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伊原春樹コラム

投手、野手のバランスが抜群のソフトバンク。次から次へと選手が飛び出し、ワキ役の働きも他球団を圧倒する

 

6月12日の巨人戦[ヤフオクドーム]では二番の城所[左]が2打席連続本塁打を放ち、7対5の勝利に貢献。試合後に松田とともにお立ち台に上がった/写真=湯浅芳昭


 6月16日現在、貯金26を数え、パ・リーグで2位・ロッテに8.5ゲーム差をつけ、交流戦でも首位を走るソフトバンク。リーグ3連覇へ一人旅状態で、このまま行けば7月にも優勝マジックが点灯する勢いだ。

 1986年から94年、森祇晶監督の下、西武が黄金時代を築いたが、そのとき私もコーチを務めていた。よく試合前練習で相手チームと挨拶を交わしたとき、冗談混じりに「パの火を消さないでくださいよ」と言われ、ファンからも「面白くないので、少しは負けて」と声を掛けられた。しかし、首脳陣は順位などを少しは気にするかもしれないが、選手はただ自分のプレーを懸命にこなしているだけ。まず、個人成績があって、チーム成績は後からついてくる。そんな考えでいたはずだ。おそらく、ソフトバンクの選手も同様だろう。

 まあ、とにかく、ソフトバンクは投手、野手のバランスが抜群だ。選手のレベルの高さ、層の厚さは他球団と比較して飛び抜けているのは言うまでもない。これは球団の勝利だ。編成面でどこよりも企業努力してきた結果が、ここにきて如実に表れている。

 例えば先発陣。開幕投手を務めた攝津正が3試合に投げて0勝2敗、防御率9.42で二軍落ちすると、待っていましたとばかりに中田賢一が昇格。最近でもバンデンハークに疲れが見えて先発を飛ばすと、代わりに6月7日のDeNA戦(ヤフオクドーム)で山田大樹が投げ、7回1失点で1100日ぶりの勝利をマークした。

 5年ぶりに日本球界に復帰した和田毅もメジャーでは故障もあって、満足のいく成績を残せなかったが、現在は渡米前とそん色ないピッチングを披露してリーグ最多の8勝。スピードは若干落ちているが、駆け引きやコントロールは相変わらず。その豊富な経験も、投手陣全体に好影響を及ぼしているだろう。東浜巨も成長。変化球のキレ味は新人時代から有していたが、速球のスピードが足りなかった。だが、今年はそこが改善され144、5キロ出るようになったから、試合を作り、勝てるようになった。

 打者陣では柳田悠岐内川聖一長谷川勇也のクリーンアップに、六番・松田宣浩、七番・中村晃の中心は崩さず、そのほかの枝葉の部分を状態に応じて巧みに起用。今宮健太の打撃も「もう少し良ければ」と思わせるが、試合展開がこう着したときにチャンスメークしたり、タイムリーを打ったりする。城所龍磨も12日の巨人戦(ヤフオクドーム)で1、2打席目に本塁打を打ったように、貴重な一発を放つ。本多雄一の状態が落ちれば、代わりに出る牧原大成が実によく働く。ワキ役の仕事ぶりは本当に目覚ましい。

 工藤公康監督のベンチ内での表情も、パを代表するチームを率いる責任感にあふれているように感じる。死角がないソフトバンク。だが、他チームも指をくわえて見ているだけではいけない。フロントも含めて、ソフトバンク以上のチームになるように努力を重ねるべきだ。そうすれば、自然とレベルの高いゲームをファンに見せることができるようになる。

PROFILE
いはら・はるき●1949年1月18日生まれ。広島県出身。北川工高(現・府中東高)から芝浦工大を経て、71年ドラフト2位で西鉄入団。76年巨人に移籍し、78年古巣ライオンズに復帰して80年限りで現役引退。通算成績は450試合出場、打率.241、12本塁打、58打点。81〜99年に西武で守備走塁コーチを務め、西武黄金時代の名三塁コーチとして高い評価を受ける。2000年阪神コーチ、01年西武コーチから02〜03年西武監督、04年オリックス監督を歴任。07〜10年巨人ヘッドコーチを務め、14年は西武監督。現在は野球解説者として活躍している。
伊原春樹の野球の真髄

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座右の銘は野球道。野球評論家として存在感を放つ伊原春樹の連載コラム。

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